00488_事業譲渡後も「商号」を使い続ける場合に行っておくべきリスク回避措置

ある会社の事業を譲渡するのに、事業とともに
「商号」
も譲渡する場合、
「事業を譲り受ける側」
には、原則として
「事業を譲渡する側」
の事業によって生じた債務を負担する義務が生じます(会社法22条)。

これは、会社の合併等の場合と異なり、事業譲渡においては元の債権者の債権を確保する手続がないため、
「債務者側の一方的都合で、ある日突然、事業オーナーが変更されて債権を取りっぱぐれる」
という事態から保護すべき必要があるからです。

例えば、飲食店事業を営むA株式会社から、飲食店事業とともに
「A株式会社」
という商号をも譲り受けた場合、債権者からみれば
「『A株式会社』が飲食店事業に関する債務を負担している」
という外観は何も変わっていないので、この外観を信じて回収行動に出ることなくおとなしくしていた債権者の信頼を保護しよう、ということです。

なお、
「どうしても元の会社の債務について責任を負いたくない」
という場合には、きちんとした方法が用意されています。

事業譲受け後、直ちに、本店所在地で
「『事業を譲渡する側』の債務については責任を負いません」
との「免責の登記」を打って公示することにより、事業譲渡でM&Aしたセラー(売り主)の背負っているワケの分からない債務から解放されるのです(会社法22条2項)。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

弁護士法人畑中鐵丸法律事務所
弁護士法人畑中鐵丸法律事務所が提供する、企業法務の実務現場のニーズにマッチしたリテラシー・ノウハウ・テンプレート等の総合情報サイトです