表見取締役が締結した契約は、会社の代表者が締結した契約と同様の契約として、会社はその契約から発生する義務を履行しなければなりません。
ただし、会社法354条が適用されるためには、
「権限のないことを知らなかった」場合
でなければなりません。
一口に
「知らなかった」
といっても、
「権限のないことを知らなくて当然」
「うっかり知らなかった」
「どう考えても権限があるとは思えないのに、どうして信じてしまったの?!」
と、さまざまな程度や理由があります。
権限のないことを知らなかった理由によって、契約を成立したことにして保護してあげる必要性は異なるので、
どんな状況でも信じたもん勝ち!
っていう訳ではないんですね。
会社法354条にはその理由、程度については明記されていません。
そこで、
どの程度の「うっかり」
であれば保護されるのかというと、代表権のないことを知らなかったことにつき第三者に重大な過失があるとき以外はOKというのが最高裁判例の理屈です。
つまり、ヤバいシグナルがビンビン出ているにもかかわらず、アホな考えで権限がないことを調べなかったような場合には、知っていたのと同じと考えて、そんな、ボーッと生きているウッカリさんは保護しません、ということなんですよ。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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