00535_辞めて競業しそうな人間に「鈴をつける」ための手法

有能な人間を自社で囲い込む方法のひとつに、彼(彼女)を取締役に選任してしまうという裏技があります。

取締役になると、会社との関係は、労働基準法でなく、商法により規律されることになります。

そして、取締役は、会社に対して、
「善管注意義務」
「忠実義務」
という非常に重い責任を負うことになり、これに違反すると会社法違反として損害賠償が発生することになります。

すなわち、従業員の場合、労働基準法が保護してくれるわけですが、取締役になった途端、会社法がプロとして厳しい責任を課してくるのです。

そして、一旦、従業員を取締役に選任した場合、(言葉は悪いですが)会社に縛り付けることとなり、当該従業員は在任中に独立準備をしているだけでも、それが露骨で競業等と判断される場合、法的責任に問われることにります。

少なくとも、各種独立や競業の準備がやりにくくなることは事実です。

以上のとおり、有能だが、裏切って独立しそうな人間は、取締役にしてスズをつけておくのも一考に値します。

ただ、裁判例等をみると、取締役が形式に過ぎず、あくまで労働法による要保護実体のある使用人兼務役員の場合、名目ないしレッテルが取締役であっても、労働法による保護が及ぶ、と判断される場合もあります。

給与水準や給与の定め方、経営への関与のさせかた、責任に対応した地位や処遇や権限といった、ことも配慮しておくべき必要があります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

弁護士法人畑中鐵丸法律事務所
弁護士法人畑中鐵丸法律事務所が提供する、企業法務の実務現場のニーズにマッチしたリテラシー・ノウハウ・テンプレート等の総合情報サイトです