00537_一流の企業は、紛争が生じたら、「勝訴を目論む」前に、「『紛争発生自体』を失敗と捉え、猛省し、予防法務に活かすこと」に注力する

きちんとした合意書を作らないまま、相当程度のリソースをつぎ込んでビジネスを進行させ、失敗してロスが出た途端、
「先生、友達の社長のAからの紹介で来たんだけど、裁判に強いんだって? 弁護料たんまり払うから、なんとか落とし前つけてやってよ」
なんて感じのお客さんがたまにいらっしゃいます。

こういうお客さんに対して
「私もこんな奴は許せませんねえ。絶対勝ちましょう!」
とか応じ、ポジティブな見通しを共有しちゃうのは三流以下の弁護士です。

一流の弁護士は、まず、なぜそういう事態に陥ったのかをきちんと分析し、二度と同じようなトラブルに見舞われないよう、クライアントを啓蒙することを第一義とします。

その上で、今回の件については
「大きな契約において適切な予防法務を講じなかったことが原因で、トラブルの場面で自らの法的立場の正当性を説明できない状況に立っていること」
をきちんとクライアントに理解させ、客観的にみて相当程度敗訴のリスクがあることを伝え、そのような不利な環境の中、和解に至るまでの現実的な戦略を冷静な観点で描き、これをわかりやすく提示していくものです。

顧問弁護士がいながら、その弁護士を予防法務のために用いることなく、顧問弁護士に紛争処理ばかり依頼している企業とは、
「優秀な侍医がいるにもかかわらず、クスリの処方や健康管理の助言を頼まず、暴飲暴食して、調子が悪くなったら手術をして体を切り刻んでばかりいる」
ような人と同じです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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