00581_被告が「訴訟上の和解」条件設計に際して考慮すべきポイント:(4) 清算条項

裁判内外の和解において、
「原告及び被告は、本和解契約に定める外、当事者間に何らの債権債務関係が存在しないことを、相互に確認する」
などという条項を入れることがよくあります(債権債務関係の清算を行うことから「清算条項」などといいます)。

ここで注意が必要なのは、
「原告及び被告は、『本件に関し、』本和解契約に定める外、当事者間に何らの債権債務関係が存在しないことを、相互に確認する」
タイプの条項と、
「原告及び被告は、本和解契約に定める外、当事者間に何らの債権債務関係が存在しないことを、相互に確認する」
タイプの条項
の2つがあるということです。

なんだ、
「2つともたいして変わんないじゃん」
なんて声が聞こえてきそうですが、
「本件に関し、」
があるのとないのとで、実は大きく異なるのです。

前者(「本件に関し、」がついている方)だと、本件以外の問題について従前の事実関係に基づき債権者(被害者・原告)が被告(加害者・債務者)に対して請求すべき事案が生じた場合、原告債権者が、再度、被告に対して訴訟を提起する余地を残すことになりますが、これは被告にとって脅威となります。

後者(「本件に関し、」がついていない方。「包括清算条項」などということもあります)だと、
「本件も含め、和解時点において被告と原告との間には、一切、請求したり・されたりの関係がないこと」
を確認することになりますので、たとえ従前の事実関係に基づき原告が被告に対して請求すべきようなネタを発見した場合でも、原告は被告に対して訴訟を提起できなくなります。

例えば、二当事者間に根深い対立があり、こっちの土地の問題、あっちの土地の問題、こっちの建物の問題、あっちの建物の問題、遺産分割の問題、損害賠償の問題等々雑多な事件が複数存在する場合、包括清算条項にするかしないかでは、大きな差異を生じることになります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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