00587_企業法務ケーススタディ(No.0195):従業員の過労死で、役員個人が賠償させられる!?

本ケーススタディの詳細は、日経BizGate誌上に連載しました 経営トップのための”法律オンチ”脱却講座 シリーズの ケース2:従業員の過労死で、役員個人が賠償させられる!?をご覧ください。

相談者プロフィール:
株式会社Arimama.comアリママ・ドット・コム 代表取締役社長 慈英芽衣(じえい めい、26歳)

相談概要:
相談者は、優秀なシステム・エンジニア(SE)を少数精鋭で囲い込み、高い給料を払い、缶詰めにして働かせています。
以前、SE が過労で倒れたことがありましたが、見舞金を払って許してもらったうえ契約のなかに守秘義務条項をつけたため、まったく表沙汰になりませんでした。
このような経験から、相談者は、
「何かあれば会社から見舞金を払えばいい」
と考えていますが、本当にそれだけで済まされるのでしょうか。
以上の詳細は、ケース2:従業員の過労死で、役員個人が賠償させられる!?【事例紹介編】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1: 残業にまつわるリスク
労働基準法(労基法)32条は、
「週40時間以上労働させること」
を禁止しています。
例外的に残業を労働者にしてもらうためには、いわゆる36(サブロク)協定、労基法36条に基づいた協定を労働者側と締結したうえで、さらに労基署長に届け出る、という手続きが必要です。
また、その場合、割増賃金(最高で60%増しとなることがあります)を支払わなければなりません。
サブロク協定を締結しないで残業をさせたり、残業代を払わなかったりした場合には、
「6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金」
の刑事罰が定められています。
たとえ、法令の手続きに従って手続きを履践し、所定の残業代を払っていたとしても、過重な労働によって労働者が過労死してしまった場合には、会社は、労働契約法第5条に違反したものとして、損害賠償責任を負うこととなります。
以上の詳細は、ケース2:従業員の過労死で、役員個人が賠償させられる!?【残業にまつわるリスク】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2: 過労死が社内で発生した場合の法的責任
過労死事案が生じた場合、
「会社が安全配慮義務違反で損害賠償の支払いを命じられることはあっても、経営者が責任を負うことはないだろう」
と考えられがちです。
しかし、実際には、従業員の過労死が発生した当時の代表取締役、取締役4名に賠償責任を負わせた裁判例(大阪高裁2011年5月25日、その後、最高裁2012年9月24日決定で上告が棄却され、確定)があります。
以上の詳細は、ケース2:従業員の過労死で、役員個人が賠償させられる!?【過労死が社内で発生した場合の法的責任】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3: 過労死事案で取締役個人も被告として訴求されるリスク
中小企業で発生した過労死事件において、地裁レベルで、会社のみならず役員個人に対しても責任を負担させる判決が出始めました。
今後は、前述の最高裁決定が追い風となり、企業の規模を問わず、会社のみならず関係する取締役個人をも被告とする訴訟が増えるもの、と推測されます。
以上の詳細は、ケース2:従業員の過労死で、役員個人が賠償させられる!?【過労死事案で取締役個人も被告として訴求されるリスク】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点4: 「過労死を防止する社内体制構築」義務の明確化
前述最高裁の原審である大阪高裁判決は、その理由のなかで、
「取締役は会社に対する善管注意義務として、会社が使用者としての安全配慮義務に反し、労働者の生命、健康を損なう事態を招くことのないよう注意する義務を負い、これを懈怠して労働者に損害を与えた場合には会社法429条1項の責任を負うと解するのが相当」
「責任感のある誠実な経営者であれば自社の労働者の至高の法益である生命・健康を損なうことがないような体制を構築し,長時間勤務による過重労働を抑制する措置を採る義務があることは自明」
と述べています。
以上の詳細は、ケース2:従業員の過労死で、役員個人が賠償させられる!?【「過労死を防止する社内体制構築」義務の明確化】をご覧ください。  

モデル助言
過労死事件その他過労に関する事件について、会社だけではなく、取締役個人をも被告に加える動きが一般化しそうです。
司法が過労死の防止について厳しい判断をするようになった一方、立法においても、2014年11月1日から
「過労死等防止対策基本法」
が施行されます。
今後、いわゆるホワイトカラー・エグゼンプションなどの導入により、残業代を抑制する制度が整備されることが予測されます。
合理的な業務シフトを作り、過労死を出さない環境にしたほうが、能力の高い労働者が集まりやすくなりますし、会社にとってもプラスです。
以上の詳細は、ケース2:従業員の過労死で、役員個人が賠償させられる!?【今回の経営者・慈英(じえい)芽衣(めい)社長への処方箋】その1ケース2:従業員の過労死で、役員個人が賠償させられる!?【今回の経営者・慈英(じえい)芽衣(めい)社長への処方箋】その2をご覧ください。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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