歌は世につれ世は歌につれ、ではありませんが、法令違反や企業不祥事も、時代とともに、質・インパクトの両面における経年変化、といったものが看取されます。
結論を申し上げますと、現代は、
企業不祥事が「即」企業崩壊
につながる、企業受難時代にある、といえます。
皆さんにも実感としてお持ちかと思いますが、企業不祥事については、ここ10年、20年で、大きな変化が顕著に存在します。
2000年以前の牧歌的な時代であれ、現在であれ、企業不祥事は相変わらず次々と発生します。
ですが、昔と今では、影響ないし効果に隔絶した差異がみられます。
すなわち、以前であれば、企業不祥事の一度や二度、三度や四度や五度くらいで、そう簡単に企業はつぶれませんでしたし(現在も、5発くらいデカい不祥事をやらかしても、しぶとく生き残っている企業もあるにはありますが、やはり、以前よりも、不祥事後は、死なないまでも、相当肩身が狭くなります)、さらにいえば、問題として広がりませんでしたし、問題にすらならないこともありました。
終身雇用を前提に、
「企業はファミリー、従業員は家族。一生、一緒にいてくれや」
ということが当たり前だった時代です。
不祥事の萌芽があっても、家族結束して秘密を守り、そもそも法やモラルに違反することが表に出てくることはなかったのですから。
ところが、終身雇用は崩壊し、リストラや転職や途中入社は当たり前。
これに伴い、聞こえの悪い企業の内情を、復讐心をもった人間が、
「正義」
の名の下に、いくらでも漏洩することが可能な状況が出現しました。
公益通報者保護法、実体に即して少し言い方を変えれば、
「企業不祥事密告奨励法」
なる法律システムも成立・施行となりました。
これに輪をかけ、インターネットという匿名メディアが誕生し、普及し、今や、かつてのオールドメディアを駆逐する勢いです。
匿名個人が、安易に、低コストで、高パフォーマンスで、
企業の「しくじり」
を全世界に向けて瞬時に伝達することが可能な時代が到来しました。
企業不祥事は、もはや秘匿が困難であり、露見しても鎮火が不可能であり、延焼・類焼し、
「ボヤが大火事になる」
ということが当たり前の時代になりました。
企業のスキャンダルが、不買運動、指名停止、上場廃止、身売り、さらには倒産といった企業崩壊に直結するようになったのです。
これが、1980年代、90年代とは異なる企業環境である、といえます。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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