00605_「法務部」設計に際して考慮すべき、「有事」蓋然性、想定ダメージ及びコスト・パフォーマンス

軍事における有事対応が
「武器・兵器」
の効率的整備運用によって敵を殲滅(せんめつ)することによって安全保障の実を上げることが想定されます。

他方、企業における有事対応は、司法手続であれ、行政手続であれ、私的な交渉であれ、自己の主張や立場の正当性の雄弁に物語る客観的痕跡としての
「文書」「記録」
を効率的に整備運用することによって、権利を確保・実現し、負担すべきでない義務や責任から免れ、あるいは自らの立場を芳しくすることが想定されます。

その意味では、
・有事を想定するイマジネーションを強化し、有事において最前線で活動する実働傭兵部隊である外部専門家(顧問弁護士)と良好な関係を構築して後方支援の実を上げること
と、
・有事の際にモノを言う「文書」「記録」を丹念に整備すること
こそが、法務部の活動として求められる本質的要素といえます。

ところで、米国の軍事組織ないし治安維持組織が、陸海空さらに海兵隊を含めた軍隊に加え、CIA、FBIといった巨大な犯罪対応や治安維持組織がある一方、バチカンやモナコやブータンにおいては、(米国との比較において)小規模な組織しかない国もあります。

スイスは、それほど大国とはいえませんが、4万人の職業軍人と20万人超の予備役から成る軍隊を有し、有事の際は焦土作戦も含めた徹底抗戦によって国家独立を維持するという国家意思を表明しています。

他方で、モナコ公国にように、領土防衛はフランスに責任をもってもらい、
「銃騎兵中隊」なる軍隊
はあるにはあるが、事実上警備・儀仗部隊しかない、という国家もあります。

もっと安全保障が貧弱な国もあります。

バチカン市国は、そもそも軍事力は一切もちません。

警察力も、永世中立国であるスイスからの傭兵にお願いしています。

従前は、教皇騎馬衛兵や宮殿衛兵といわれる衛兵隊がいたようですが、ただのお飾りであり、これすら無駄・無意味ということなのか1970年に廃止されています。

要するに、人生イロイロ、国家もイロイロ、安全保障もイロイロということなのです。

安全保障体制設計がイロイロ・ソレゾレということですから、正解や模範やお手本や
「これだけは必要といった妙な制約条件」
があるわけではありません。

国家ですらこういうことですから、いわんや、在野の企業組織については、より一層自由に、適当に決めていい、といえましょう。

したがって企業は、それぞれの有事発生の蓋然性と有事の際に生じ得るダメージの大きさと懐具合とを相談しながら、適宜自由に決めていけばいいということになります。

企業における
「富の蓄積」
という活動については、売上を上限として、投入コストが導けます(売上を上回るコストを費やしたら、企業組織は持続不能に陥ります)が、安全保障コストはこの種の
「経済的合理性による制約」
が働きにくく、過大にならないように注意が必要です。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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