企業安全保障サービスとしての
「法務活動」
について、どのような範囲・内実とし、どのような提供組織に担わせるか(内製化するか外注化するか)は、一つの政策判断であり、絶対的な正解があるものではありません。
前提として、そもそも、企業が主体的に制御する
「法務活動=安全保障活動」全体
をどう捉えるか(あるいは、何をギブアップするか)も、1つの政策判断です。
まず、企業が必要とする
「法務活動=安全保障活動」全体のサービス設計
を行う必要があります。
有事対応については、一切想定も意識も準備もせず、
「起きたら起きたで、行き当りばったりの出たとこ勝負」
という判断もあり得るでしょう。
さらには、平時の安全保障についても、予算をはじめとした資源投入すら忌避し、これすらも、
「もったいないので、ほったらかし」
という場合もあり得ます(年商数億円程度の中小零細企業ではよくみられますし、経営者の楽観バイアス・正常性バイアスが強く、そもそも法務という活動の価値や意味すら理解していない、いわゆる安全保障無頓着、平和ボケの一部オーナー系企業においても、この傾向はみられます)。
ただ、ゴーイング・コンサーンを真摯に考える、相応の組織体制を整備した企業においては、平時安全保障から、有事を意識した準備体制をある程度具体的に整備しています。
有事対応は、意思決定(各戦略オプションについての対応上の態度決定を行う意思決定)及び意思決定支援については、企業内部の固有の活動として社内の権限及び責任範囲として留保されます。
有事対応を具体的に実施する際、状況整理や情報整理といった後方支援活動は企業内の法務部が担うことが多いですが、前線における戦略実現のための活動一切は、外注にかかる外部専門家に委ねることが一般的です。
他方、平時の法務活動は、内製も外注もあり得るところです。
これらの体制整備課題の選択決定は、予算制約と人材スペック(法務部員のスキル)の限界・制約によって、内製・外注の調達区分の問題として課題処理されます。
以上のように、企業安全保障サービスについては、
・所掌する活動範囲をどう定義するか(あるいは、安全保障活動のどの範囲を、ギブアップしたり、無視・軽視・放置するか)、
・所掌する法務活動のうち、予算制約・要員の能力限界をふまえ、どの範囲を内製化するか、
という観点から、各企業毎に、法務スタッフのスキル・経験(社内人材のデキ具合)と予算制約(懐具合)を勘案して、最適な調達(あるいはそもそも調達自体をギブアップすること)を決定していくことになります。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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