00640_企業法務ケーススタディ(No.0222):訴訟のコスパ やられたらやり返すな!

本ケーススタディの詳細は、日経BizGate誌上に連載しました 経営トップのための”法律オンチ”脱却講座 シリーズのケース29:訴訟のコスパ やられたらやり返すな!をご覧ください。

相談者プロフィール:
アルティメット・リベラル株式会社 代表取締役社長 古市 太刀郎(ふるいち たちろう、62歳)

相談概要:
相談者の会社では、契約があいまいな取引において、条件変更の合意後の状況確認もあいまいなまま、勝手に取引条件を変えられていたこともあり、差額対価の損害が出ています 。
内容証明を送り、一部未払いの代金精算を求めましたが、相手会社は、双方が代金減額を容認したからと応じません。
訴訟をするとなると、過去3年間の事実経緯を整理しなければなりませんが、そのデータは消えてしまっていて、復元には100万円近くかかるうえ、従業員を関わらせると本来の事業の機会損失が大きくなります。
さらに弁護士費用、裁判所に納める費用をはじめ、気の遠くなるようなコストと時間とエネルギーを消耗するのは目に見えています。
以上の詳細は、ケース29:訴訟のコスパ やられたらやり返すな!【事例紹介編】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1: 仕返しのコスパ
支出は増える、時間はかかる、気の遠くなる手間はかかる、でも、カネが増えるわけでもなく、何のメリットもないことを続けていれば、会社はつぶれます。
裁判はその典型といえます。
訴訟をして、かなり高い確率で、数千万円いや数億円の賠償金が手にできるのであれば、ビジネスジャッジメントとして合理的といえなくもありませんが、コスパを考えると、企業活動としては考えるまでもなくやってはいけない、ということが容易に理解されるところです。
以上の詳細は、ケース29:訴訟のコスパ やられたらやり返すな!【仕返しのコスパ】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:原告にとってあまりに不愉快な制度
裁判システムは、ボクシングやプロレスの試合に例えると、原告が、ひとりぼっちで、苦労して試合会場設営を完了させてから、レフリー(裁判官)と対戦相手(被告・相手方)をお招きし、戦いを始めなければならないし、さらにいうと、設営された試合会場ないしリングに少しでも不備があると、対戦相手(被告・相手方)もレフリー(裁判官)もケチや因縁や難癖をつけ、隙きあらば無効試合・ノーゲームにして、とっとと帰ろう、という非協力的な態度をとりつづけるイメージのゲームイベントである、といえます。
以上の詳細は、ケース29:訴訟のコスパ やられたらやり返すな!【原告にとってあまりに不愉快な制度】をご覧ください。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:前提としての体験事実の言語化・文書化
弁護士は、
「依頼者の、記憶喚起・復元・再現し、これを言語化し、記録化し、ある程度文書化された事件にまつわる全体験事実」(ファクトレポート)
から、依頼者が求める権利や法的立場を基礎づけるストーリー(メインの事実)ないしエピソード(副次的・背景的事情)を抽出し、こちらの手元にある痕跡(証拠)や相手方が手元に有すると推測される痕跡(証拠)を想定しながら、破綻のない形で、裁判所に提出し、より有利なリングを設営して、試合を有利に運べるお膳立てをすることが主たる役割として担います。
真剣かつ誠実に裁判を遂行しようとすると、依頼者側において、
「弁護士費用や裁判所利用料としての印紙代という外部化客観化されたコスト」
以外に、気の遠くなるような資源を動員して、
「事実経緯を、記憶喚起・復元・再現し、これを言語化し、記録化し、文書化する」
作業を貫徹することが要求され、 それには、とてつもない時間とエネルギーが必要になります。
以上の詳細は、ケース29:訴訟のコスパ やられたらやり返すな!【前提としての体験事実の言語化・文書化】をご覧ください。

モデル助言:
経済的に考えれば、現実的期待値を100万円をはるかに割り込んでいるような経済的成果のために、300万円をはるかに超える資源を動員するということは、明らかに不合理です。
過酷で膨大なコストや手間がかかる
「体験事実の再現・言語化・文書化」
をすっ飛ばして、曖昧な話を適当な作り話で埋め合わせ、駄法螺に毛の生えた程度のストーリーに仕立て、すぐさまツッコまれて瓦解するようないい加減な主張を、高級な言語で粉飾して整えて訴訟を申し立てたところで、早晩行き詰まることは明らかです。
今回の事件を教訓として、類似のリスクの探索と防止を含めて、より強靭な取引管理を推進する契機として活用した方がよほど商売にはプラスと思いますよ。
紛議はビジネスに致命的なダメージを与えますが、この種の予防施策はビジネスには劇的なメリットがあります。
復讐は裁判ではなくて、ビジネスでやるべきですね。
以上の詳細は、ケース29:訴訟のコスパ やられたらやり返すな!【今回の経営者・古市社長への処方箋】をご覧ください。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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