本ケーススタディの詳細は、日経BizGate誌上に連載しました 経営トップのための”法律オンチ”脱却講座 シリーズのケース31:不動産保有会社を格安M&A?をご覧ください。
相談者プロフィール:
富沢商事株式会社 代表取締役社長 富沢 松夫(とみざわ まつお、66歳)
相談概要:
新しいチェーン店を建築するための土地を探していたところ、土地を手放そうとしていたホテルオーナーから、M&Aを持ちかけられました。
ホテルは会社所有、会社株は100%オーナーの所有、土地建物も担保はなく、会社まるごと買ってくれるのなら、土地の時価ベースで7割くらいの金額でいい、とまでいわれました。
そこで、相談者は、M&Aをすすめ、会社を買ったらすぐに廃業し、建物を壊し、来年には新規チェーン店を開業してオリンピック景気に乗ろう、と考えました。
以上の詳細は、ケース31:不動産保有会社を格安M&A?【事例紹介編】をご覧ください。
本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:「人格ある経済実体・法的実体である企業」との取引
「建物付で購入した上で、更地にする」
となると、解体コストがかかり、さらに、地盤調査が必要であったり、軟弱地盤であることが判明したり、環境汚染が判明したり、埋蔵文化財が出てきたりと、リスクが増えます。
会社を丸ごと買うとなると、リスクはもっと増大します。
従業員は
「会社で働き、給料をもらう、という関係が続く」
前提が壊れるとなると、強く抵抗することになります。
たとえ、経済的には
「経営上必要な資源である更地を買う」
のと、
「更地になっていない土地の上に建物があり、その土地と建物を所有し、いまだ事業を継続している企業を丸ごと買う」
のが同じであったとしても、無視できない負荷や資源喪失の可能性や事件に発展するリスクの存在を確認でき、法律的・リスク管理的には、かなりの差異を生じます。
以上の詳細は、ケース31:不動産保有会社を格安M&A?【「人格ある経済実体・法的実体である企業」との取引】をご覧ください。
本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:「京品ホテル」のケースから学ぶこと
廃業に伴いリスクが衝撃的な形で顕在化した裁判例があります。
京品実業は、廃業し、京品ホテルを解体して更地にした上で興味ある事業者に売却し各種整理清算する目論見だったのですが、一部の従業員が労働組合を結成し団体交渉を申し入れ、さらに、裁判を起こすとともに廃業翌日から“自主営業”を開始しました。
メディアが連日報道し異常性と事件性だけが世間の耳目を集めたことから、京品実業はホテルの土地及び建物を引き渡すべき義務の債務不履行状態に陥りました。
以上の詳細は、ケース31:不動産保有会社を格安M&A?【「京品ホテル」のケースから学ぶこと】をご覧ください。
本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3: 想定外の抵抗で大幅な時間費消
従業員サイドが自主的な退去を拒否したことから、強制執行が実施され、執行官・警備会社・警察側と、元従業員とこれを支援する労組との間で衝突が起きました。
元従業員らは強制的に排除され自主営業状態は解消されたものの、その後も舞台を東京地裁労働部とする訴訟は継続しました。
最終的には当初廃業通告から1年半超経過後に、労使間で和解が成立しましたが、企業側は当初想定していた退職金条件より相当程度負担の大きな金銭を負担させられただけでなく、時間や機会という貴重な資源を大きく損ねました。
以上の詳細は、ケース31:不動産保有会社を格安M&A?【想定外の抵抗で大幅な時間費消】をご覧ください。
モデル助言:
M&Aという取引形態そのものから考え直した方がいいでしょう。
ここは冷静に、
「カネほしけりゃ、更地にしてもってこい。
そちらのリスクと負担と責任で更地にして、売れるだけの準備を整えて。
余計なものがくっついて使えない土地なら、びた一文払わないよ」
という経済的に純化された目的に適合したスタンスを再確認し、取引構築を検討されるべきでしょうね。
以上の詳細は、ケース31:不動産保有会社を格安M&A?【今回の経営者・富沢社長への処方箋】をご覧ください。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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