00765_社外弁護士への外注スキル2:外注先業者たる弁護士の実体と生態(1)弁護士バッジをもらうまで

一昔前の世間一般の弁護士の印象というと、
「なんだか理屈っぽくて、とっつきにくく、そもそも滅多にお目にかかれない存在。たまにお目にかかるときはというと、トラブルにあったときで、できれば一生お目にかかりたくない存在」
といったもので、一種の疫病神のようなイメージだったのではないでしょうか。

ところが、現在では、お茶の間をわかすくらい話が上手で、それなりに自己演出ができ、
「親しみやすいタレント」
としてテレビのバラエティ番組にレギュラー出演する弁護士が登場するなど、この20年くらいで弁護士のイメージもずいぶん変わってきたと思います。

とはいえ、いまだ
「弁護士さんって、一体どんなことができて、どんなことをやってくれるのかさっぱりわからないし、どんな風に使いこなせばいいのか?」
という疑問をお持ちの方は少なくないと思われます。

そもそも弁護士とは、どんなキャリア、どんな能力をもった人がなるのでしょうか。

実は、弁護士という資格を得るための制度が、21世紀に入ってから大きく変わってきましたので、以前の仕組と現在の仕組を併せて説明します。

1 旧司法試験

以前は、

  • 学歴不問、性別不問、人種不問
  • 誰でも、何回でも参加できる、年に1回のガチンコ勝負
  • 最終合格率2%前後、合格者平均年齢30歳

という、
「20世紀の科挙」
とさえ評される、世界でも類を見ない難関の試験(旧司法試験)を突破することが弁護士になるための第1の条件でした。

(旧)司法試験に合格すると、その後2年間(その後1年半に短縮)、最高裁所属の準公務員としての身分(司法修習生)を与えられ、司法研修所や全国各地の裁判所・検察庁での研修を積むことになります。

司法修習生とは、要するに、防衛大学校の生徒と同じく、給料をもらって勉強できるという恵まれた身分なのです。

司法研修所を卒業に際しては、考試(通称「二回試験」)という最終試験があり、これにパスすれば、各地の弁護士会への入会を経て、弁護士バッジを手にすることができます。

現在弁護士と言われる人間の圧倒的多数は、このような(旧)司法試験を合格してきた人々です。

そこそこ年季の入った弁護士さんに会ったら、
「先生の頃は司法試験ってすごく難しかったんですよね」
なんてお世辞を言うと、たいていの弁護士さんは、自尊心が多いにくすぐられ、ニコニコしてくれると思います。

2 新司法試験

ところが、5年ほど前から、
「弁護士の数が足りないので急いで増員すべきだ」
との声が上がり、ロースクール(法科大学院)制度が導入されました。

この新制度の下では、

1)原則として2年ないし3年の法科大学院教育を受けた者に受験資格を限定(例外的に、法科大学院卒業資格試験とも言える司法試験予備試験に合格すれば法科大学院を経由しなくとも新司法試験に受験できます)

2)合格率2~30%程度の試験(新司法試験)

を受ければいいことになりました。

そして、(新)司法試験合格後1年少々の司法研修を経て、弁護士資格が与えられるようになりました。

当初、旧司法試験を合格した弁護士さんたちは
「こんな簡単な試験を合格したような連中はどうせ能力がないし、ウチでは雇わない。仮に雇っても安い給料しか払わないよ」
という対応をし始めておりましたが、最近は、弁護士全体が景気が悪く、
「雇いたいが、そんな余裕もない」
といった対応で、いずせにせよ、弁護士の就職難傾向が続いています(こういう背景もあり、社内弁護士として企業に就職する弁護士も増加しています)。

とはいえ、弁護士バッジをもらうまでに、基本的な法律知識(憲法、民法、刑法、会社法等)と法律上の権利を実現するための手続に関する知識(訴訟法)、そしてこれら知識を現場でどのように生かすか、ということを教育され、それなりの試験にパスすることが求められることは事実です。

なお、実際問題として、弁護士バッジをつけたばかりの新人弁護士が、独力で依頼者の満足を達成するだけのサービスを提供するということは、ほぼ不可能で、経験を積んだ弁護士のところで勤務し、実践の中で経験値を蓄積する形で一人前になっていきます。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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