00767_社外弁護士への外注スキル4:外注先業者たる弁護士の実体と生態(3)弁護士の実態把握と能力検証

1 弁護士の能力格差

プロの野球選手にも、メジャーリーガーとシングルAのマイナーリーガーがいるように、弁護士にも明らかな能力差が存在します。

無論、弁護士は皆難関試験を突破してきた秀才ですし、少なくとも合格時点において、世間一般の方々より法律知識はあり、偏差値が高かったことは事実です。

しかし、その後、

・勉強なり研究なりを積んできたかのか、それとも弁護士という資格の上に胡座をかいて遊び呆けていたか
・目まぐるしく変わる法改正や新法にきちんと対応すべく情報を整理・収集してきたか、合格した当時の知識に依拠して適当な仕事をしてきたか
・よき環境の下チャレンジングな仕事を行ってきたのか、十年一日が如く定型作業を続けてきたのか

などの要因によって、3年も経てば弁護士の能力には顕著な差が出てくるようになります。

2 実はお気楽な弁護士ライフ

一般に、弁護士というと、
「しかめ面して難しい本を読んで、世を憂いて、政治や社会に一家言を持ったインテリゲンチャ」
といったイメージをお持ちかもしれませんが、実際には、そういう人はあまり多くありません。

「会社法改正はまったくわからず、金融商品取引法や独禁法などはすでに理解することをあきらめ、判例雑誌は読まず、購入する本はマニュアルばかり。裁判手続でわからなければロクに調べもせず裁判所に電話して聞き、日が落ちたら銀座に飲みに行き」
というお気楽な生活をされている方も相当いらっしゃいます。

最近は、弁護士の数が増え、競争が激しくなってきましたし、法律が目まぐるしく変わるようになってきたこともあり、この種のお気楽派弁護士の数が減ってはきたものの、他の業種に比べると、まだまだ業界内にお気楽派が生息できるだけの余裕があるといえます。

3 優秀でない弁護士の特徴

優秀でない弁護士を端的に形容するならば、
「お人好し」
「楽観的」
「物事を安易に考える」
「脇が甘い」
ということに尽きます。

優秀でない弁護士は、
「客観的状況」
の深刻さを分析することなく、
「こうあるべき」
「こうだろう」
「こうなるはず」
などを連発し、依頼者を無責任に鼓舞して、無闇に期待値を高めます。

そして、こういう方は、
「ゴールをあいまいにしたまま、依頼者の意図を実現するための法的環境を無視して、とりあえず手続に着手し、様子をみようか」
などという無責任・無定見なことを平気でやります。

こんな仕事をしていてうまくいくはずがなく、無残に失敗し、最後に依頼者に迷惑をかけてしまいます。

4 たのもしい弁護士は優秀か

「たのもしそうな」
弁護士というのもクセモノです。

相談の席で
「勝てます」
「その権利は認められてしかるべき」
などと自信をもって語る弁護士は、たいそうたのもしく見えます。

ですが、その種のことを言うのは、単に弁護士が事件遂行上の課題を理解していないことによることが多く、
「たのもしそうに見える弁護士」
は、紛争経験値の欠如による、根拠なき自信を有しているだけ、ということがあります。

実際、着手前に
「これは勝てるし、勝つべき事案だ」
「私に任せれば大丈夫」
などという無責任なことを平気で言っていた弁護士が、慢心から想定すべき事態を考慮せず、前提が次々と崩れる中、挙げ句の果てに依頼者から
「着手金泥棒」
呼ばわりされる、といったこともよくあるそうです。

5 優秀な弁護士

では、優秀な弁護士とはどんな弁護士なのでしょうか。

優秀な弁護士に共通する要素として、悲観主義者で、小心者で、猜疑心の固まり、といったものが挙げられます。

優秀な弁護士ほど、ゴールを明確にすることを重要視します。

クライアントの目指すゴールがあいまいな場合、ゴールが明らかになるまで徹底した議論を行ないますし、複数のゴールが存在する場合、価値の優劣を見極め、状況に応じて、死守するゴールと放棄するゴールを整然と区別します。

例えば、契約交渉を行う場合、特定の条件を貫徹するのか、条件に固執せず合意自体を優先するのか、合意を優先するとした場合どこまでの譲歩であればリスクとして許容するのか、等をゴールとして明確に把握しておくのです。

以上のようなことを事前に明らかにしておかないと、目まぐるしく変遷する契約交渉過程において、契約条件の維持・放棄の判断が即座にできず、結果として、合意形成ができなくなったり、結果的に不利な合意をしてしまうことになりかねません。

優秀な弁護士は、置かれた状況を整理し、きちんと設定したゴール達成する上でのあらゆる法的障害を想定し、法的障害を効率的に克服するための合理的戦略を策定し、戦術的困難を克服しながら、堅実に所定の成果を出すのです。

以上みてきたとおり、弁護士を選ぶなら、
「明るい方」
「たのもしい方」
よりも、
「あらゆる不測の事態を想定し、緻密で地味な作業を要領よく実践できる慎重居士」
の方が優秀である可能性が高い、ということがいえると思います。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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