00768_社外弁護士への外注スキル5:外注先業者たる弁護士の実体と生態(4)弁護士を上手に使いこなすコツ

1 「道具」としての弁護士

弁護士は、別に人間的に素晴らしいわけではなく、ただの事務屋であり、一般の人に比べてエラいわけでもありません。

言ってしまえば、弁護士は、自分の権利やワガママを通したり、トラブルに遭遇しないための方策を提供する
「道具」
に過ぎません。

道具をうまく使いこなすためには、その道具の特性やクセをよく知る必要がありますが、弁護士は、数が少なく、その生態は謎に満ちており、特性把握が困難といえます。

2 弁護士の特性

多くの弁護士が、おそろしく時間貧乏で、合理主義社・能率優先主義者であることを知っておく必要があります。

したがって、準備も資料もなく弁護士を訪問し
「ゆっくりと時間をかけてこちらの話を聞いてもらおう」
というスタンスで臨んでも、経緯を説明するだけですぐに相談時間が終わってしまい、解決の糸口がつかめないまま何度も足を運ぶことになりかねません。

無論、そういう無駄な時間が発生しても相談料は取られますし、
「話がトロい依頼者」
にしびれを切らし、弁護士サイドで課題を一方的にまとめられ、本当に聞きたいものとはまったく違った助言を与えられる場合も出てきます。

3 弁護士を使いこなすには準備が重要

「せっかちで無駄が嫌い」
な弁護士を使いこなすには、使う側において、それなりの準備が求められることになります。

それなりの準備といっても大したことではありません。

法律相談に限らず、事情を知らない第三者に相談を持ちかける場合、まず自分の置かれた状況や聞きたいことを正確に伝えなければならないのは当たり前です。

とはいえ、
「当たり前のことができない方」
が極めて多く、このことが弁護士の使い方の失敗につながっているようです。

4 平均的日本人はコミュニケーション無能力

「事実関係をきちんと伝える」
といえば簡単そうに聞こえますが、実は、平均的日本人は、コミュニケーション能力一般が致命的に欠如しており、
「事情の知らない第三者に、自分の置かれた状況を客観的に伝える」
ということが恐ろしく下手だったりします。

よく
「日本人は英語が下手」
などと言われますが、これは発音とか抑揚とか語順とかの問題ではありません。

日本人の英語下手は、このようなリタラシー一般の低さに由来するのであり、
「日本人のコミュニケーション下手」

「英語下手」
につながっているのです。

ですので、
「自分の置かれた状況を手際よく伝える」
ことを甘く考えてはならず、それなりの時間をかけて準備をすることが重要となります。

5 5W1Hに基づき客観的事実を正確に伝える

法律相談の場面では、
「とにかく相手はひどいんだ」
とか、
「今まで業界はこれでやってきたのでいきなり行政がこういうことを言ってくるのは不当だ」
とか主観的な意見ばかり述べられる方がいらっしゃいます。

「相手が何時、どこで、何を、どのようにしたことが、何法に違反するのか」
「法令の状況はどうなっていて、業界の慣行がどの法令にどの程度違反しており、行政はどういう是正を求めてきているのか」
を客観的に把握しないと、相談される側は解決の糸口さえつかめません。

弁護士を使い慣れている人は、
1)関係する事実を、5W1Hに整理して、主観を交えず伝え、
2)証拠となるべき関係資料を事前に整理して持参する、
といったことを励行されています。

また、相談の概要を事前にファックスとか電子メールで伝えると、弁護士も、予め下調べをして打ち合わせに臨めますので、非常に効果的です。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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