00808_企業人としての業務スキル2:報連相(2)連絡する

仕事の基本である
「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」
の連絡についてです。

1 報告と連絡の違い

仕事において行うべき連絡についてですが、
「連絡と報告の違いがわからない」
などとよく言われます。

これは私なりの区別ですが、
報告とは
「過去に発生した事実や発生しつつある経過を、上司の指揮命令や報告義務に基づいて行うもの」
であり、
連絡とは
「将来における予定や計画を自発的に行うもの」
と考えています。

弁護士の活動でいいますと、裁判所での弁論期日が行われた場合、クライアントに対して、
「期日において、相手方からこういう主張があった、こういう証拠が提出された」
「裁判所から、この点が不明であると言われた」
「裁判所からこういう主張や証拠があるのであれば、これを次回までに準備しろ、と宿題を与えられた」
等といった過去の出来事を伝えるのが報告です。

そして、以上のような報告を前提に、
「裁判所から指示された宿題を次回の期日までに準備する」
というミッションを達成するために、
「何時何時に事務所に来て、協議をしてほしい」
「証拠になるかどうか検討したいので、こういう資料があるかどうか捜して、あれば事務所に送ってもらいたい」等
これからのアクションを伝えるのが連絡である、と理解されます。

連絡においても、報告と同様、タイミングよく行うことが必要ですし、内容面においても
「何時、どこで、何を、どのような方法で行うか」
という点について、正確かつ明瞭に記載した文書でタイミングよく行うことが求められます。

2 連絡の受信者に対するフォロー

連絡については、たまに、
「そんな連絡を受けていない」
「聞いていない」
「知らなかった」
「忘れた」
といった話が出てきます。

また、連絡においてこちらがお願いした準備や用意をしてこない、ということもよく発生します。

無論、これらは連絡の受け手側に問題があるのですが、仕事のデキる人間は、こういう事態まで先取りし、受信者から
「当方の連絡を了解し、確認した」旨
のCONFIRMATIONの返信をもらったりしますし、REMAINDER(備忘再告知)という形で予定日程が近づくと念押しするための連絡を行ったりする場合があります。

いずれにせよ、連絡を効果的に行うためには、受け手の理解認識状況をふまえて、効果的に対応するとともに、細かなフォローが必要と思います。

少し面倒くさい話をしますと、意思表示に関する法的取扱においては、意思表示を発信する側ではなく、意思表示を受ける相手側の便宜が全てにおいて優先されます。

これは、
「到達主義」
と呼ばれるドクトリンで、取引における意思表示や訴訟その他で行われる法的なコミュニケーションにおいては、
「連絡したらそれでOK」
ではなく、
「連絡内容が相手方にきちんと伝わったか否かまで、連絡発信者においてきちんとフォローしろ」
というルールが適用されます。

内容証明郵便で法的な連絡文書を送りつける場合も配達証明まで取っておかないと、後日、
「そんな文書は知らんし、みたことない」
等という形で到達が争われる場合があります。

訴訟に関していえば、どんなに正当で合理的な内容の訴状を作成して相手に送りつけても、訴状が相手方に到達したことが確認されない限り裁判を始めることすらできないのです。

このように、
「言ったはずなのに忘れている」
「連絡したはずなのに届いていない」
というのは、
「すべて連絡した側の連絡方法が悪い。発信者が注意すべきだ」
というのが法的取扱となるのです。

この到達主義というドクトリンで連絡すべきか、逆のドクトリン(発信主義)で連絡すべきか、という点については、ビジネス社会、企業社会では、力関係によります。

すなわち、立場が上の者が下の者に対して連絡する場合は発信主義(連絡は発信したらそれで完了。何らかの理由で受け取っていない、聞いていない、到達していない、という場合、受け手の責任)であり、立場が下の者が上の者に対して連絡する場合は到達主義ということになります。

3 上司への連絡

上司その他自分の上位者に対する連絡に関しては、受信者が
「自分以外の部下からも様々な連絡を集中して受ける」
という環境にあり、また自分よりも数倍も忙しい立場にあるので、
「連絡をしても、きちんと受けられない」
ということがままあります。

ですので、上司に対する連絡については、こういう点も含めて、
「どのようにすれば相手にきちんと伝わるかどうか」
を考えながら、方法・タイミングともに効果的な形で実施することが必要ですし、こういうことがスマートにできる人間は、一般に出世も早いようです。

初出:『筆鋒鋭利』No.040、「ポリスマガジン」誌、2010年12月号(2010年12月20日発売)

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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