事後において株主による責任追及の可能性が大きい経営上の意思決定(言い換えれば、株主の権利等に影響を及ぼす可能性が大きなプロジェクトであるM&Aや特定のファイナンス等)においては、当該意思決定の合法性・合理性が徹底して確保されるべき必要があります。
このような場合、企業経営陣としては、法務サイド(法務セクションや顧問弁護士)を招聘し、経営意思決定においてどのような規制等が存在するのかを確認させます(法令管理)。
その上で、法務は、
「第三者委員会等の外部の意見を聴取する機関を設置・運営し、特定の経営意思決定の合理性・合法性について意見を徴求すべきである」、
「その際は、委員会の独立性に疑義が呈される場合があるので、日弁連のガイドラインや東証の関連規員1に配慮しながら設置運営すべきである」
といった知見を提供することになります。
また、例えば、特定の企業と事業パートナーシップを締結し、共同で事業を進めるという場合、法務サイドとしては、
「提携形態について、生産提携、販売提携、ジョイントベンチャー、M&A等がある」
「M&Aを実施する場合、株式買取、合併、事業譲渡等がある」
という形で様々な選択肢があることを情報として提供し、より精緻で合理的な経営判断ができるよう支援していくことになります(もちろん、これにとどまらず、合法性に関しては、独占禁止法上の企業結合規制に関するリスクを提示することも法務による経営サポート法務活動として重要です)。
持株会社の設立、敵対的買収防衛策の導入、ESOP制度(従業員持株制度)構築、新事業立ち上げ、海外進出といった、企業にとって重要な政策意思決定や事業企画については、検討段階から法務セクションが参画し、合法性や合理性確保の観点から、積極的に知見を提供していくことになりますが、これが経営サポート法務といわれる法務活動となります。
以上のほか、SPC(特定目的会社)を用いたオフバランススキームやデット・エクィティ・スワップ、デット・デット・スワップ等、会計技術と会社法とが融合した技術性の高いプロジェクトや、企業組織再編税制の適用を前提としたM&A等、会計と税務と法務とが融合した経営戦略の構築・遂行にあたっても、事業構築早期の段階から法務担当者や弁護士が討議に参加して進めていくことになりますが、このよう事業の進め方も、経営サポート法務活動の1つと考えられます。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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