2015年から、
「デフレ脱却のため、異次元ともいえるレベルで金融の量的緩和(通貨供給量の増加)で、経済が再び成長する」
という社会実験(アベノミクス)が行われはじめました。
しかしながら、この政策によって
「高度経済成長時代のような継続する右肩上がりが再来する」
という事態に至ることは、およそ想定困難です。
確かに、アベノミクスにより若干景況感が改善し、株価も上昇しましたが、東証全体のPER(Price Earnings Ratioの略称。株価収益率。バブル期は60倍となっていた)は12倍程度というフツーの水準になったに過ぎず、相変わらず、利用価値が高い一部不動産を除き不動産価格は低迷したままです。
フェラーリやベントレーが飛ぶように売れたり、ゴルフ会員権やリゾート会員権が高騰したり、といった話もあまり聞かれません。
バブル経済崩壊後、
「モノ余り、 低成長時代」
を迎えて成熟した日本の経済社会においては、 すでに、監督官庁の保護育成も、業界同士の横のつながりも、今までの大量消費(販売)を前提とした大量生産もまったく機能しなくなっています。
金融緩和云々は別にして、産業社会は、
「品質と価格に基づく、シビアな能率競争」
を前提に、縮小しつつあるパイを苛烈に奪い合う競争社会に突入したのです。
このように、環境がシビアなものに変化する中、営業不振に仰ぐ企業が増えてきています。
そうした営業不振にあえぐ企業において出てくる話が、
「起死回生の一発逆転」
という施策です。
しかし、企業において、起死回生の一発逆転の秘策が奏功した例はほとんどなく、むしろ、無駄なことをせずひたすら競争に耐えていれば、残存者利益を得るか、身近で地味な分野に業態転換して、しぶとく生き残れていた可能性があったにもかかわらず、いたずらに死期を早める結果に終わる例ばかりです。
「起死回生の一発逆転の秘策」
の例でいいますと、国際進出やM&Aといったものです。
そのいずれも、日本企業の不得意中の不得意分野で、多大な経営資源を費消した挙げ句、さらに死期を早めることになる、ということになるケースが散見されます。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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