本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2009年10月号(9月25日発売号) に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」十一の巻(第11回)「景品規制 」をご覧ください。
当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)
相手方:
阿津(アツ)化粧品株式会社
景品規制:
ライバル企業が製品購入者全員にプレゼントをつけて販売を開始したため、当社の化粧品部門の売上が落ちました。
そこで、当社でも、購入者全員にプレゼントキャンペーンを企画することにしました。
景表法に違反しないよう、
「これまでの1年間に当社製品を25万円以上ご購入のお客様に限り、期間中にさらに当社製品をご購入いただくと、もれなく5万円の純金グッズをプレゼント」
と、商品価格(取引価額)の20%を超えないアイデアを出しました。
本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:景表法とは
景表法は、その名のとおり、
「景品規制」
と
「表示規制(誇大広告や原産国の虚偽表示など、消費者に誤認される不当な表示に対する規制)」
の2つの規制により不当な顧客誘引を防止し、商品やサービスの、消費者による適正な選択の確保を図っています。
過剰な景品合戦がエスカレートすれば、企業は商品やサービスそのものを改善することに力を注がなくなる危険性があります。
また、消費者が景品の豪華さに惑わされ、本来の目的であったはずの商品やサービスの点で質の悪いものを購入させられたり、ひいては、優れた商品を提供していた企業が景品合戦に敗れて淘汰され、市場に質の悪い商品ばかりが出回る結果を招来しかねません。
こうした理由から、景表法は、結局は消費者の不利益へとつながる過大な景品類の提供を禁止しているのです。
本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:景品規制の4類型
「景品類」
は次の4類型に分類され、それぞれ異なる規制内容に服します。
1.一般懸賞:偶然性(くじ引き等)や競争の優劣等により、商品・サービスの利用者の一部に対し、景品を提供
2.共同懸賞:商店街や一定地域の同業者が共同で実施する懸賞
3.総付景品:一般消費者である商品・サービスの利用者や来店者に対し、もれなく景品を提供(原則として、事業者向けのものは除く)
4.オープン懸賞:誰でも応募できる懸賞
尚、1と2については
「最高額」
と
「景品総額」
の上限が定められ、3については
「最高額」
の上限のみ定められています。
4については、平成18年に規制が撤廃され、現在は上限額の定めはありません(規制緩和)。
本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:総付景品に対する規制
総付景品の上限は、
「取引価額が1000円未満の場合は200円まで」
「取引価額が1000円以上の場合は取引価額の20%まで」
とされています。
「購入者を対象とし、購入額に応じて景品類を提供する場合は、当該購入額を取引価額とする」
のが原則ですが、購入額の多寡を問わずに景品を提供する場合など、この原則だけでは判断できないケースが少なくありません。
本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点4:総付景品に対する規制
景品規制違反行為の疑いがある場合、公取委は、資料の収集や関係者への事情聴取などの調査を開始し、違反行為が認められる場合は、事態の改善や違反行為の禁止を命ずる排除命令(景表法6条)がなされ、確定した排除命令に従わない場合、違反行為者に対して2年以下の懲役又は300万円以下の罰金、企業に対しても300万円以下の罰金が科されます。
景品規制に違反しても公取委の排除命令に素直に従えば罰金等が課されることはありませんが、キャンペーン撤回や排除命令の公表等があると企業の信用が大きく損なわれますので、景品規制も重要なコンプライアンス上の課題といえます。
助言のポイント
1.過大な景品の提供は景表法違反。「消費者が喜ぶ豪華な景品のどこが悪い!」と抗議しても、公取委には通じない。
2.景品規制には4つの類型があり、それぞれについて規制内容が異なる。まずは、どの類型に当てはまる景品なのかを確認しよう。
3.景品規制は、景品価格と取引価額の関係がポイント。取引価額は、過去の購入額でなく、当該景品提供により期待される新たな取引を基準に算定すること。
4.キャンペーンの撤回等は企業の信用を大きく毀損することになる。入念な事前検討を怠った見切り発車の景品キャンペーンはNG。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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