00964_企業法務ケーススタディ(No.0284):訪問しなくても訪問販売!?

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2013年11月号(10月25日発売号)に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」五十六の巻(第56回)「訪問しなくても訪問販売!?」をご覧ください 。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)

相手方:
一般消費者

訪問しなくても訪問販売!?:
英会話を勉強し直そうという人を対象に、アメリカのテレビドラマのDVDを売り出そうとしています。
特定商取引法の規制に触れないよう、個人宅に訪問せずに、人の集まっているところに行って声をかけ当社の事務所へ連れてきて契約を締結、あるいは、レストランを貸し切ってスポーツイベントをやりながらの即売会で、販売することにしました。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:訪問販売とは
家を訪問するから
「訪問販売」
というわけではありません。
自社の営業所以外の場所で契約を締結することおよび自社の営業所以外の場所で勧誘した人を営業所に連れてきて契約を締結することを
「訪問販売」
といいます(特定商取引に関する法律(以下「特商法」)2条1項)。
チラシ配布や呼び込み等は、これにあたりません。
「訪問販売」=「営業所以外の場所販売」
なのです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:訪問販売に対する規制
訪問販売に該当する取引を行う場合は、消費者を保護する特商法上の、以下の規制を受けることとなります。
1.氏名及び勧誘目的の明示(特商法3条)
2.再勧誘の禁止(特商法3条の2)
3.書面の交付義務(特商法4条、5条)
4.不実告知等の禁止(特商法6条)
5.クーリング・オフ(特商法9条)
特商法によって課される事業者の義務を履行すれば訪問販売を行うことは可能ですが、訪問販売に該当すると気づかず、書面の交付を行わなかったり、クーリング・オフの規定を盛り込まないまま訪問販売に該当する業務を行えば、業務停止命令が下されるおそれもあります。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:適用除外
事業者が営業所以外の場所で契約を締結する場合、すべての取引について特商法上の規制が及ぶわけではありません。
営業のためになされた契約や国や地方公共団体によって行われた契約、組合内の契約や企業内での従業員に対する契約等については、特商法上の規制が及ばないとの規定がなされています(特商法26条)。
「営業のために」
とは、事業・職務の用に供するために何かを購入したり、役務の提供を受けたりする場合を指します。
契約の相手方が事業者や法人であることをもって、一律に適用除外とするものではありません。

助言のポイント
1.「訪問販売」≠「訪問して販売する」、「訪問販売」=「営業所以外の場所で販売する」こと。「訪問しなくても訪問販売」。
2.訪問販売を行うには、か弱い消費者のために。手取り足取り確認させ、助ける「書面の交付」「クーリング・オフ」が必要。
3.「相手が消費者でなければ大丈夫!」ってわけでもない。特商法は、“事業者の着ぐるみを着た「か弱い消費者」”までも守る。
4.特商法は正義の味方! これに違反するとそのペナルティは重大! 散々悪者扱いされた挙げ句、コンシューマー向けビジネスは潰れる。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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