01003_企業法務ケーススタディ(No.0323):なぬ!? それが独禁法違反とな!?

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2017年2月号(1月25日発売号)に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」九十五の巻(第95回)「なぬ!? それが独禁法違反とな!?」をご覧ください 。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)
同社 通販サイト ジャングル・ドット・コム

相手方:
公正取引委員会

なぬ!? それが独禁法違反とな!?
グループ傘下で急成長しているネット通販サイトの出品ポリシーが私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」)に抵触したようで、 公正取引委員会(以下「公取委」)から、お叱りメッセージが届きました。
しかし、社長は、
「ウチで出品する以上、他のサイトで、ウチの出品価格より安く出品しないことを誓約させことの何が悪い、他のサイトを大事にするような出品者など門前払いにして、公取委と本腰を入れてケンカする」
と、いいます。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:最恵国待遇条項(MFN)
設例において、当社通販サイトが出品企業に要求している取引上の措置は、
「最恵国待遇条項(most favored nation clause、あるいは「MFN条項」)」
と呼ばれるもので、当社通販サイトに出品する企業は、他のサイトに出品しても構わないが、もし他のサイトで当社サイトより安い価格で出品した場合、当社サイトでの出品価格もそれに併せて安く変更する、というものです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:拘束条件付取引
問題となるのは、拘束条件付取引を禁止する独禁法のルールです。
「相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて、当該相手方と取引すること」
は、拘束条件付取引として、独禁法上の不公正取引の1つの類型(一般指定12項)として、違法視されています。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:独禁法が、企業が取引相手に、「浮気」や「二股」や「正妻をおざなりにした自由交際」を推奨する趣旨
わが国においては、企業の経済活動の自由が保障され、自由な競争が体制保障されいますし、国家が企業間のビジネスにあまりにも過度に干渉するのはおかしいように思えます。
しかし、歴史上証明された真実として、
「強者が、自分たちにとって都合のいいルールを作って、好き勝手やりたい放題、なんでもアリの、野放図な競争」
を放置すれば、強者が市場を自由に支配できるようになり、そうすると、やがて、
「高くて粗悪なもの」
が流通・蔓延し、しかも新規参入によって是正する機会も失われ、最終的には経済が衰退し、国が滅びます。
そういうこともあり、独禁法は、自由な競争基盤を確保するため、排他条件付取引や拘束条件付取引を
「ご法度」
として禁圧しているのです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点4:公取委の強硬なアクションへの対応策
独禁法の指定条項をつぶさにみますと、拘束条件がついた取引はすべて違法、ということではないようです。
取引の内容や拘束の程度等に応じて公正な競争を阻害するおそれを判断し、競争を人為的に歪めて公正な競争秩序に悪影響を及ぼすような例外的な場合に限定して違法視される建付けをとっています。
そこで、
「競争を制限する意図は毛頭なく、むしろ、より競争を活発にしようとして、『もし有利な条件闘争をしかけるところがあったら、弊社にも反対条件を提案する機会を保障させてください』と、取引相手にお願いして、より、健全に競争を活発化させる意図によるものでした」
と弁解し、他方で
「行き違いとはいえ、失礼しました。
でも意図せざるを得ないものなので、どうすれば、誤解を受けないで、より、他社と弊社が激しい競争ができるようになるか、逆にご教示、ご指導ください」
と低姿勢にご指導を仰げば、警告や指導で沙汰止みになる可能性はあるでしょう。

助言のポイント
1.独禁法は、しびれるくらい自由でガチンコの競争環境を確保するため、取引相手の「浮気、二股、新しい愛人作り」ともいうべき、自由交際を保障している。
2.一般の恋愛関係のように、取引相手の浮気や二股をガッチガッチに禁圧すると「独禁法の保障する、スーパーフリーの自由恋愛、自由交際を不当に損ねる」として、公取委からお叱りを受けることもあり得る。
3.万が一、公取委ににらまれた場合、取引環境を理解し、空気を読み、「成熟した大人の外交交渉」でうまいこと切り抜けよう。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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