01019_企業法務ケーススタディ(No.0339):海外独禁法の恐怖(1)なぬ!? アメリカでトラブルだと!?

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2018年6月号(5月25日発売号)に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」百十一の巻(第111回)「海外独禁法の恐怖(1)なぬ!? アメリカでトラブルだと!?」をご覧ください 。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)
脇甘社長の甥 グループ会社 脇甘アメリカ 社長 脇甘 亜米太郎(わきあま あめたろう)

相手方:
アメリカ司法省

海外独禁法の恐怖(1)なぬ!? アメリカでトラブルだと!?
アメリカ司法省から子会社に
「SUBPOENA」
が届きました。
子会社が、現地で、日本でいうところの独禁法違反の疑いがあり、調査するので一切合財の文書提出や証人喚問に応じよ、という内容だそうです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:他人事ではない米国当局による摘発
昨今、検察や公正取引委員会(以下、「公取委」)によるカルテルの摘発が活発になっています。
海外に目を転じても、当局によるカルテルの摘発は活発で、特に、米司法省反トラスト局から、日本企業が狙われるケースが多いようです。
米国政府の意図は不明ですが、自動車部品カルテルでは、名だたる企業に、軒並み百億円単位の課徴金が課されています。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:そんなに独占がイケナイことなの?
独占禁止法(さらに縮めて「独禁法」)は、
「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」
の略称です。
「企業に、怠けたり、八百長したり、ズルしたりせず、休むことなく、延々と、かつ、とことん競争させる」
というのが法の狙いです。
市場に一人しかいない状態でそもそも競争が観念できない状態(独占)が出現した場合や、販売者が結託して価格を固定(カルテル)した場合、さらには
「大きなプレーヤーによる零細事業者への一方的で暴虐的な振る舞い」
によって競争の前提が損なわれるような場合、消費者は高くて粗悪なモノを押し付けられ、しかも、それが長期間にわたって是正されない危険が生じます。
市場メカニズムが重要なのは、適正な自由競争、すなわち価格競争と品質競争を通じて、一般国民に、
「安くてエエもん」
を迅速・適正に提供させ、国を豊かにしよう、という国民経済の基本が関わっているからです。
このため、独禁法という強烈な取締法規を厳格に運用し、カルテルその他の反競争的行為を規制、弾圧することにより、正常な市場メカニズムを確保し、一般国民の利益を保護しようとしているのです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:消費者が食いモノにされるメカニズム
企業は儲けるために消費者に買ってもらえるようなモノを作る、消費者はモノを気に入った時に財布のヒモを緩める、この営みが繰り返されることで、マーケットに生き残るモノは
「安くてエエもん」
に収斂されていきます。
ダメな商品・サービス・提供企業が淘汰され、革新的な商品・サービスをひっさげた新規参入が促され、国全体の経済力が自律的に強靭化されていくというのが、本来の資本主義のあるべき姿です。
しかし、暴虐的なまでに大きなプレーヤーが登場すると、有利な立場を利用し、品質改善や値下げに投じるべきコストを、消費者に押し付け、粗悪なモノを売り付けるようになります。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点4:本家本元のシビレルほど厳しい法規制
欧米では、独禁法あるいは反競争法は、日本では想像できないくらい、法も運用も厳しいのです。
刑罰もシビアですし、罰金も半端ない、というわけです。

助言のポイント
1.前門の公取委、後門の反トラスト局。日本国内におけるカルテルにすぎないとしても、海外当局から狙われることがある点を頭にインプットすること。
2.自由競争・資本主義国家の国是は、あくまで「トコトン競争」。独禁法は、未遂・既遂・予備・思想を含め、競争を回避する行為や状況を弾圧すべく、厳しく目を光らせているぞ。独禁法は、「企業を死ぬまで競争させて、安くてエエもんを社会に提供させ、国を豊かにするための法律」という本質から理解しておくこと。
3.独禁法の本家本元は欧米。巨大企業の反競争的な弊害も半端なく、その苦い経験から、日本とは段違いに規制も取締運用も厳しい。日本と同じ、などと考えると、足をすくわれる。甘く、軽く考えず、正しく恐怖し、適切にビビりながら、しっかり対応すること。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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