01037_企業法務ケーススタディ(No.0357):証人尋問のお作法!?

本ケーススタディーは、事例及び解説の概要・骨子に限定して要約・再構成したものです。
詳細をご覧になりたい方は、「会社法務A2Z」誌 2019年12月号(11月25日発売号)に掲載されました連載ケース・スタディー「鐵丸先生の 生兵法務(なまびょうほうむ)は大怪我のもと!」百二十九の巻(第129回)「証人尋問のお作法!?」をご覧ください 。

当方:
脇甘(ワキアマ)商事株式会社 社長 脇甘 満寿留(わきあま みする)
同社法務部 部長 執高 鰤男(しったか ぶりお)
同社 顧問弁護士 千代凸 亡信(ちよとつ もうしん)
同社 部長 師土路 戻郎(しどろ もどろう)

相手方:
インターナショナル・ネンダ・マテリアル株式会社(「インネン社」) 社長 稔田(ねんだ)
インネン社代理人 橘田・八田(キッタハッタ)法律事務所パートナー 橘田(きった)弁護士

証人尋問のお作法!?:
当社は取引相手から訴訟を起こされ、裁判では尋問前の和解でも話がつかず、証人尋問となりました。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点1:裁判における証人尋問の意義
民事訴訟法の世界においては、証人は
「証拠方法」
すなわち、事実の痕跡が人間の脳の記憶領域に格納された意味合いとして扱われています。
証人尋問という
「記録(記憶)再生手続」
を行い、その結果を尋問調書として記録し、当該調書が
「証拠資料」
として取り扱われ、事実立証に活用されます。
したがって、証人尋問において、勝手に話を誘導したり威嚇したり困惑させたり議論をふっかけしたりするのは、
「記録再生」
という即物的な営みにおいてはまったく無意味かつ有害です。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点2:証人尋問の具体的対応術
推奨されるべき準備や心構えとしては、
1 尋問態度:
何を聞かれようが議論をふっかけられようが惑わされず、裁判官にきちんと目を向けて 、自分の記憶していることをハキハキと答えることが推奨されます。
2 想定問答を暗記することの是非:
想定問答の模範回答を暗記するのは無意味かつ有害です。
忘れたら、
「忘れてしまいました」
と正直に話せばいいだけです。
準備をするのなら、それまでに裁判所に提出した自分名義の陳述書をよく読み、
「自分がそれまで何を話したか」
を再確認し、矛盾したり誤解されたりしないように記憶をリフレッシュすることの方が重要です。
3 反対尋問への対応:
反対尋問の際には、質問から必ず
「一呼吸」
置いて、答えるべきです。
話がかぶると、記録をとっている書記官がうまく記録できなくなり、大変迷惑がかかるうえ、結局、証人尋問の成果である尋問調書の記載が混乱し、その価値が低下して、事実立証に使えなくなります。
さらにいうと、証人を窮地に陥るピンチから救う可能性が不可逆的に喪失する意味で、証人サイドに立つ弁護士としては非常に困るのです。

本相談を検討する際の考慮すべき法律上の問題点3:証人尋問の最大のヤマ場は反対尋問ではない
尋問の最大のヤマ場中のヤマ場は、
「補充尋問(裁判官による質問)」
です。
補充尋問では、本当に重要で、事件の勝敗分岐にかかわる決定的事項の確認がなされます。
補充尋問の際、裁判官が小さい声で何をいっているのかわからないからと、適当に曖昧に愛想笑いしていい加減な答えをしたばかりに、
「それまで話した内容とまったく違う答え」
と誤解されると、取り返しのつかない事態になります。

助言のポイント
1.テレビドラマのイメージだけで証人尋問を想定すると、大きく失敗する。実際の証人尋問の意義と役割、ゲーム環境や達成ゴールをしっかり確認し、正しく対応すること。
2.裁判官に向かって堂々とハキハキと目をみてしっかり答えること。裁判官を敬う余り、遠慮したり、下を向いてボソボソもじもじするのは、ウソをついているようにみえて逆効果。あくまで、裁判官からどうみえるか、を基準に、すべてのプレゼン対応を構築すること。
3.相手方の弁護士の反対尋問は、冷静に、一拍「間」を置いて、対応しよう。感情的になって論争をふっかけられても、ドライにクールに、裁判官に対して淡々と受け答えをすること。勝敗を決する証人尋問の最重要のヤマ場は補充尋問。適当に曖昧に受け流さず、最後まで気を抜かず、しっかりと受け答えをして、勝負を勝ち取ろう。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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