01056_「非法務活動(疑似法務活動)の概念整理(概念区分)」による法務活動の定義外延の明確化

企業法務の活動を正しく理解し、位置づける上では、倫理、道徳、伝統文化、環境問題、社会貢献、CSRといった
「非法務活動(あるいは疑似法務活動)」
と企業法務の関係性を概念整理(概念区分)し、このような
「非法務活動」

「本来の企業法務活動」
に混在させないことが極めて重要です。

学者や実務家の中には、コンプライアンス法務に企業倫理、環境経営、社会貢献といった非法律的マターを含めて考える説を唱える方もいますが、著者はこの立場に強く反対します。

憲法22条1項による営業の自由の保障を通じて、わが国は自由主義経済体制を採用しました。

企業は法律で明確に禁止された事項以外について自由な活動を保障され、競争を通じて産業社会の発展に貢献するものとされます。

そして、企業法務とは、このような企業の自由な競争活動を支援するために、リスクとしての法環境を分析し、科学的・合理的に管理することを行動の本旨とするものです。

このような活動哲学を持つべき部署に、広報・IR政策として推進されるべき倫理や道徳の遵守、環境への配慮、社会貢献などを担わせることは、アクセルとブレーキを同時に踏ませるがごとき愚行であり、全く不合理で理解できない行動といえます。

「道徳や倫理、地球環境への配慮、CO2排出削減といった非法律的要求事項を遵守するか否か、遵守するとしてどの程度遵守するか」
といった非法務活動(あるいは疑似法務活動)は、これらの遵守が明確な法規範となれば格別、
「契約自由の原則及び営業活動の自由の理念に基づき、営利追求を本質とする企業活動を最大限支援する」
という企業法務活動とは明確に分離すべきものです。

したがって、合理的な企業法務活動を整理構築する上では、これら疑似概念との関係性を概念整理した上で、意識の点でも、所掌分担の点でも、明確に除外することが重要となります。

もちろん、著者は、ここで
「非法務活動(あるいは疑似法務活動)」
として整理分類した、
「倫理、道徳、伝統文化、環境問題、社会貢献やCSR等」
にまつわる企業活動の価値の一切を否定する意図はありません。

著者の意図は、
「非法務活動(あるいは疑似法務活動)は企業法務活動として、主体性と責任をもって推進する課題とは別のものである」
という認識上の整理を明確にすべきである、という点にあります。

「倫理、道徳、伝統文化、環境問題、社会貢献やCSR等にまつわる企業活動」
も重要ですが、
「このような企業活動を推奨することは、社会全体にとって望ましい結果になるので、規範としては強制されないが、行った方がいいかもしれない」
という程度のものに過ぎません。

企業の社会貢献に関しても、多くの企業は重篤な誤解をしていますが、企業の存在目的は営利の追求であり、企業の最大かつ唯一の社会貢献は、効率的な営利追求と、これを前提とした極力多くの額の納税です。

そして、企業の営利追求の結果として行われた納税により、健全な財政基盤を確保した国家が、倫理、道徳、伝統文化、環境問題、社会貢献といった事柄の増進や解決を担う姿こそが本来のあり方といえます。

いずれにせよ、
「非法務活動の概念整理による法務活動外延の明確化」
というテーマは、企業法務活動としての本質を見失わないためにも必要不可欠な事柄です。

こういう概念整理をおろそかにしながら、企業法務を担う部署に
「法の許す範囲で徹底的に営利を追求しろ。
ただ、倫理や地球環境、社会貢献、伝統文化も考えろ」
などといった不合理な指示を与えても混乱を招くだけであり、このような愚行は避けるべきと考えます。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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