01122_予防対策フェーズ>法務活動・フェーズ3>コンプライアンス法務(フェーズ3B)内部統制システム構築・運用法務>(4)メリット>最高裁判示

「企業の法令違反行為に起因する企業不祥事が発生した場合に、経営陣を免責するに足りるだけの実質を備えたコンプライアンス法務(内部統制システム構築・運用法務)」
を実践していた企業において、現実に不祥事が発生してしまい、経営陣に対して責任を追及する訴訟が提起されました。

この事例は、従業員らが営業成績を上げる目的で架空売上を計上したため有価証券報告書に不実の記載がなされていたところ、これを信頼して株式を購入した株主が、その後不実記載が公表されたことで株価が下がったため、会社法350条に基づき損害賠償請求をしたというものです。

本件訴訟の地裁・高裁は、
「適切なリスク管理体制を構築すべき義務を怠った過失がある」
という理由で株主の請求を認容しました。

しかし、最高裁(平成21年7月9日判決)は、
「従業員らの行為が偽造印等を使用しての偽造という通常想定しがたい方法によるもので、しかも、会社で通常想定される不正行為防止体制が整備されていた」
として、
「管理体制構築義務についての過失は認められない」
旨判示しています(最高裁平成21年7月9日判決「日本システム技術事件」)。

【図表】(C)畑中鐵丸、(一社)日本みらい基金 /出典:企業法務バイブル[第2版]
著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

このように、最高裁も、
「合理的な内部統制システムを構築・運用している限り、仮に、事件・事故・不祥事が起こっても、取締役は善管注意義務違反を問われない」
という
「内部統制システム構築・運用義務の免責効果」
を正面から是認しています。

そして、最高裁は
「当該企業の活動によってどのようなリスクが具体的に発生する可能性があるのかという点を分析し、これに対処するための合理的なリスク管理体制を整え」
ることを求めていますので、次に各論として問題になるのは、
「自社における合理的な内部統制構築義務がどのようなものか」
ということになります。

運営管理コード:CLBP96TO97

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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