コンプライアンス法務の推進を内外に表明する企業は実に多く存在していますが、これら企業の実際の行動をみてみると、威勢のいい表明とは逆に、コンプライアンス確立のための法務体制確立に向けた具体的努力の形跡がほとんど窺えず、そのうち重篤な不祥事を発生してしまう、といったところが少なくありません。
コンプライアンス法務確立に向けた
「決意」
の中身ないし程度は、声の大きさではなく、具体的行動、すなわち、どれだけ予算と人員を確保したか、という点こそが重要な評価ファクターになります。
すなわち、
「コンプライアンス法務推進に向けたトップの決意の強さは、法務予算と法務人員の増額・増員の量に比例する」
というわけです。
無論、確保された予算と人員が効率的に運用されるためにも、コンプライアンス法務の推進にあたる実務責任者を明確に特定し、当該者の権限を十分確保することも必要です。
また、コンプライアンス法務を適切に遂行している企業の行動をみていると、推進の実務責任者がこまめに情報収集していることが窺えます。
正しい情報なきところに適切なルールは生まれません。
その意味では、担当者の情報収集力、法令情報のみならず企業運営上の細かな情報をどこまで収集し整理しているか、がコンプライアンス法務確立の成否を左右するといっても過言ではありません。
最後に、明瞭なルール策定もコンプライアンス法務を推進する上で重要です。
コンプライアンス法務においては、企業活動の様々な側面に対して、可視化・文書化・ルール化・マニュアル化が行われていきますが、当該活動においては、グレーゾーンやケースバイケースを極力排し、明確な線引きによる原則(ブライト・ライン・ルール)を明示することが肝心です。
企業不祥事の発生原因のほとんどは、
「可視化・文書化・ルール化・マニュアル化されていない操業・活動分野において、現場の裁量が幅を利かせ、長年の慣行が優先し、知らない間に法の定めたファウルラインを超えてしまう」
というシナリオを辿るケースがほとんどです。
こういう状況を改善するためにも、裁量や慣行を極力なくすことが重要であり、これらの温床となるグレーゾーンやケースバイケースルールを極力排するという姿勢が重要になってきます。
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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