一般のビジネスパースンの方からは意外に思われるのですが、弁護士は事実を語るのであって、相手を非難するのが活動の本質ではありません。
裁判所としても、事実に基づいてどちらかの当事者を勝たせるのであって、人間性や雰囲気や印象によって勝ち負けを決めているわけではありません。
その意味では、書面に
「不当」
「非常に公平を欠く」
「誠実とはいえない」
「明白に虚偽といえる」
「明らかに矛盾する」
等派手な修飾語を書きつらねられても、裁判官には全く通用しません。
裁判官としては、
「何時、誰が、どこで、どのようなことを、何回した」
から
「不当」
というのか、評価の根拠となるべき事実を知りたいのです。
裁判官の中には、当事者の書面から修飾語を、意識の上で墨塗りして読む人もいると聞きます。
しかし、死ぬほど忙しい裁判官にいちいち墨塗りする手間をかけさせるのもよくないので、
「評価の根拠となる事実を書かず、華麗な修飾語やレトリックで相手を非難し、書き手の弁護士と当事者だけが悦に入っているような文書は、原則NG」
と考えておくべきです。
実際
「訴訟によく勝つ弁護士の文書」
を読みますと、主観的な印象や評価が全く書かれておらず、客観的な事実だけを拾っただけのシンプルな文書で、全体として拍子抜けするほど素っ気ない書きぶりです。
ですが、そういう文書ほど、裁判官にとっては、スッと事実関係が頭に入ってきて、知らない間に頭の中が
「書き手のシナリオ」
で染め上げられてしまうものなのです。
評価の根拠となる事実で
「相手方が争いえないもの」
を丹念に積み上げ、相手方を非難する形容詞を一切使わずとも、相手方の行動の不当性が文書全体として滲み出てくるような文書こそが、
「訴訟において勝てる文書」
といえます。
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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