01156_有事対応フェーズ>法務活動・フェーズ4>不祥事等対応法務(フェーズ4B)>(7)各ステークホルダーの特性に応じた個別対応>監督行政機関への対応その1

監督行政機関という場合には、上場企業にとっての証券取引所等、いわゆる役所以外にも行政処分を行う機関があるので、これらも含めて考えておくべきです。

法令違反の不祥事を起こした企業の多くは、監督行政機関への報告を要請されることになります。

監督行政機関に適正な報告を実施するためには、関係者への調査を行い、正確な事実を把握することが求められます。対応の基本方針として、ひたすら頭を垂れ、お説を拝聴し、嵐の去るのをじっと待つという態度は好ましくありません。

徹底した事実調査を行い、専門家とも協議の上、
「組織としてなすべき予防策をなし、その上での個人に帰せしめるべきものか否か」
等々の反論や、今後の再発予防対策や企業の果たしてきた社会的役割等の積極的な情状主張等についてきっちりと文書を作成して行うべきです。

もちろん、結果として機能しなかったにせよ、企業が会社法上求められるべき適正な内部統制の構築を行い、これを厳格に運用し、不祥事予防に意を払ってきたことも重要な事情として主張することになります。

以上の主張等にもかかわらず、あまりにも均衡を失した処分がされた場合、行政訴訟で争うくらいの気構えを持って真摯に対応する必要があります。

このため、弁護士等を交えた法務面での対策チームを作って、有事体制時の調査とは別に、法的観点から事実調査を行うことになります。

ここでは、まず発生した法令違反に関連して適用が予想される法規の洗い出しから始めなければなりません。

そして、当該法規を分析し、法律上の効果を発生させるために必要な前提事実(法律専門家は「要件事実」といいます)について、明らかに該当する事実と明らかに該当しない事実と不明な事実という形に色分けし、それぞれどのようなエビデンスが存在しているかを正確に把握していくことになります。

この時点での調査については、法律で規定された特定事実の有無についての調査という形になります。

有事の際の調査と重なる場合もありますが、ここでの調査は法律上の効果発生(処分要件の充足の有無)に緊密に関係した直接・間接事実の存否が中心となります。

なお、調査期間についてですが、特に違反企業が金融機関等で、金融庁のような監督行政機関が強力な監督権限を有する場合、監督行政機関から報告徴収や調査の期限が設定されることもあり、企業の自主的調査・報告は一定の期限内に了することが必要になります。

このような場合、監督行政機関対策チームとしては、調査を短期間で終え、必要書類等も迅速な提出が可能な体制を構築しなければなりません。

そのため、これまでの適正な企業活動の実績や構築・運用してきた内部統制の状況を立証するために必要関係書類が整備される仕組みを作ることが重要です。

問題となっている法令違反関与者のコンプライアンス教育履歴、当該部門の監査履歴や内部通報の状況、委託先の調査履歴、契約書などはすぐに提出できるよう管理しておくべきです。

運営管理コード:CLBP137TO138

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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