企業組織は、通常、株式会社として設立され、会社法の規律の下、営利を追求し、その成果をオーナーたる株主に分配します。
本来、株式会社の運営は、オーナーたる株主の意向や会社法の規制に服するものであり、これらへの配慮を抜きにしてはおよそ会社の運営は成立不可能なはずです。
しかしながら、株式会社という組織運営を担う取締役は、売上額や利益額はともかくとして、日常の業務執行において、会社法の規制や株主を強く意識することはありません。
会社の取締役職に就くための資格として、会社法の知識や理解を問う資格試験のようなものは課されていないことからも明らかなとおり、日本の産業社会においては、取締役職は、事業遂行能力こそ要求されますが、会社法の知識が全くなくとも問題とされません。
また、日本企業においては、本来株式会社のオーナーが集まる最高意思決定機関たる株主総会は、
「なるべく手短に終わればありがたい」
と考えられており、極力無機能化・形骸化すべき存在と扱われています。
本来、株主は、株式会社のオーナーであり、経営を受任しているに過ぎない取締役を上位者として指揮・命令をすべき立場にあります。
しかしながら、株主がこのような
「本来の行動」
に出ると、
「モノ言う株主が来た」
ということで、企業組織を挙げて株主の意向を妨害する行動に出ることになります。
以上のとおり、日本の企業組織運営においては、経営幹部に、会社法の基本的素養が期待できず、また、法が本来想定したものと全く逆の理念でオーナーの意向を反映しない組織運営が一般的に行われていました。
これまでの日本の産業社会においては、会社法の詳細なルールを武器に企業経営陣の行動に逐一異議を唱える者はおらず、株主がモノを言うこともなかったため、 上記のような企業組織運営について特段問題とされることはありませんでした。
しかし、21世紀を迎え、敵対的TOBが現実化し、また、株主がオーナーシップを背景に経営陣に様々な注文をつけることが一般化してきました。
敵対的TOBやモノ言う株主に対抗するためには、今までのような感覚で乗り切ることは不可能であり、企業側も会社法を知悉し、これを武器として有効な防御を展開する必要があります。
また、企業組織運営にあたっては、株主に
「モノを言わせない」よう、
これまで以上に会社法を意識した運営が求められます。
そして、
「ビジネスと法令を適正に調和させる」
ということを至上命題とする企業法務スタッフが、企業組織運営に関する法的サポートを実践するにあたっては、
「ビジネスのスピード、効率やダイナミズムを失わせないことを前提にしつつ、法令を理解し、法令知識やリーガルマインドが不足がちな経営幹部に、リスクを伝え、適正なスキームヘの変更を促し、有事に対処する」
という対応が求められることになります。
運営管理コード:CLBP171TO172
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
✓当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ:
✓当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ:
✓当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ:
企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所