東京証券取引所では、株式公開会社の経営や株式市場の透明性を高め、また、一般株主を保護する観点から、上場会社に対して、
「独立役員(一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役又は社外監査役)」
を1名以上確保することを企業行動規範の
「遵守すべき事項」
として規定しています。
この詳細については、独立役員の確保に係る実務上の留意事項についてインターネット上に公開されています。
この独立役員制度の背景には、
「経営陣から独立した役員を確保することで、経営陣の暴走を防止し、また、少数株主の利益に配慮すべきだ」
とする海外投資家らの要望があります。
独立役員は、このような要望をふまえて、経営陣と利害関係のない立場から経営を監視し、また、不祥事防止や少数株主の利益を保護する役割を担うことになります。
東京証券取引所は、上場会社に対して、独立役員の確保に係る行動規範の遵守状況を確認するため、東証への
「独立役員届出書」
の提出を求めています。
独立役員の確保に係る(上場)企業行動規範の遵守状況ですが、集計対象となった上場会社の99.9%にあたる2,268社が独立役員(取締役及び監査役を含む)を確保済みとの届出を行っており、東京証券取引所に株券を上場する全ての3月期決算会社が独立役員を確保済みとなっています(東京証券取引所発表にかかる2015年8月付「独立役員届出書の集計結果」より)。
なお、
独立「役員」
とは、取締役に加え、監査役を加えた概念であり、上場企業において、企業経営との関わりが希薄な監査役に部外者を入れることによって
「お茶を濁そう」
という動きが従前ありましたが、東京証券取引所が2013年9月10日に発表した
「東証上場会社における社外取締役の選任状況等について」
によると、
社外「取締役」
を1名以上選任する上場会社(市場第一部)の比率は、2012年より7.0ポイント(162社)増加し、62.3%(1,092社)となっており(全上場会社では、JASDAQを含めて54.2%にあたる1,840社が社外取締役を導入済み)、
「社外の知恵や外部の視点を経営に積極的に取り入れようとする上場企業」
が増加している動きが顕著になっています。
独立役員制度の具体的・実践的取組としては、東京証券取引所が発刊する
『ハンドブック独立役員の実務』(2012年4月、商事法務)
を参照することが推奨されます。
同書は、総論と各論で構成され、総論編では独立役員の位置づけや基本的な視点を、各論編では取締役会の議案ごとに一般株主の視点やチェックリストを示し、詳細な解説が行われています。
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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