代表訴訟が提起されるに先立ち、まず、取締役の責任を追及する株主は、監査役に対して訴訟提起通知(60日以内に監査役が会社を代表して、法令違反をなした取締役を訴えることを求める通知)を発出します。
多くの会社は、この段階で株主の要求を突っぱねてしまいますが、状況によっては、監査役に訴えてもらうことも一計に値します。
次に、問題が裁判所に持ち込まれ、代表訴訟の訴状が送達され、本格的に訴訟が開始された場合であっても、いきなり土俵に上がって、法令違反行為の本質的議論を開始するのは早計といえます。
すなわち、株主代表訴訟の中には、もちろん、心底会社のことを思う株主が会社をよくするため取締役の法令違反行為の責任を追及する場合もあると思われますが、中には、特定の取締役への私怨や家族関係の拗れが原因となり、代表訴訟に名を借りた嫌がらせの裁判も見受けられます。
こうした場合には、
「特定の取締役の行為の是非」
というややこしい議論に応じて長期戦に突入するのではなく、本案審理に立ち入る前の段階で却下を求め、あるいは株主に担保提供を命じることを求めることにより、いわば
「門前払い」
の形で株主側の不当な要求を早期にはねのけてしまう対応も検討すべきです。
本案答弁に至った場合も、事実の認識の誤りを指摘するとともに、経営判断の原則を持ち出すなど、
「縦深陣」
ともいうべき布陣の下、徹底抗戦することになります。
すなわち、株主側は資料が乏しく推測や仮説で責任追及する場合が多いので、被告取締役サイドとしては圧倒的な証拠資料に基づき、抽象的で仮説や推測にわたる論難に対し、具体的立証をもって応答し、裁判所に
「株主側は抽象的な論難だが、取締役側は具体的に誠実に応答している」
という良き心証を早期に植えつけることを検討すべきです。
また、経営判断保護の原則(ビジネスジャッジメントルール)に基づき、後知恵で経営判断を誹謗することの不当性を強く訴えるべきことになります。



著者: 弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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