過労死とは、企業の職務遂行の過程で積み重なった過労や精神的ストレスが原因となって発症した疾病や自殺により、従業員が死亡することをいいます。
特に、精神的ストレスで自殺した場合を過労自殺といい、企業側においてもこのような事態を防ぐべく従業員の精神的健康(メンタルヘルス)面を十分ケアすべきだ、などといわれることがあります。
古典的な理論によれば、
「雇用契約上、従業員は労働を提供し、企業がこれに対して所定の賃金を支払えば、契約関係としては特段問題ない」
ということになります。
しかし、企業側の義務は、所定の賃金を支払えば足りるというものに尽きるものではなく、従業員が安全に労務を提供できる環境を整備すべきことも含む、と考えられるようになりました。
すなわち、現代では企業には
「従業員に労務を提供させるにあたって、従業員の生命・健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務」(安全配慮義務)も有するものとされます。
労働法務の世界では、過労死や過労自殺を防ぐための企業側の措置(従業員のメンタルヘルスケアを含む)は、安全配慮義務の履行という形で議論されています(安全配慮義務を具体化したものとしては、労働安全衛生法がありますが、企業の義務は、同法の遵守に限定されるものではありません)。
過労死や過労自殺は、全体的に増加傾向にあるといわれています。
そして、従業員が過労死や過労自殺をした場合、当該結果が企業側の安全配慮義務の不履行によるべきものかどうか、という点で争われることになります。
過労死や過労自殺においては、過酷な残業が背景になっていますが、労働基準法上違法とされる残業をさせているということは、死と業務命令の因呆関係の認定に直結しますので、企業の安全配慮としては、適正な労働時間管理がまずは大前提となります。
その上で、適切な健康管理、メンタルヘルスチェックのツールを会社内に設け、心身の健康面において疑いが生じた従業員に関しては、労働環境を調査し、必要な改善を行うべきこととなります。
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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