偽装請負とは、実態は派遣であるにもかかわらず、表向きは
「請負」
と偽るアウトソーシングのことを指します。
派遣の場合、業務上の指揮命令権を派遣先企業が有する反面、安全配慮義務についても派遣先企業が負担し、また派遣元企業も労働者派遣法上の規制に服します。
派遣元企業が労働者を派遣することを依頼されても業務請負としておけば、派遣元企業は労働者派遣法上の規制から外れることとなり、また派遣先企業も安全配慮義務を負担しなくてすむようになります。
しかし、このように形式上派遣としておきながら、仕事上の指揮命令を派遣先企業が行うことになると(偽装請負)、指揮命令権と安全配慮義務の所在があいまいになり、労災事故が生じやすくなりますし、また、労災事故が生じても責任の所在があいまいになってしまいます。
偽装請負を巡る法務トラブルとしては、労災事故等が起きた場合、派遣先企業(請負業務発注企業)も派遣元企業(請負業務受託企業)と連座させられ、損害賠償債務を負担させられることになります。
加えて、違法な労働者派遣と判断された場合、労働者派遣法上の行政指導、さらには、職業安定法違反に基づく刑事罰を受けるリスクが生じます。
偽装問題に対する行政のスタンスについてですが、行政は、
・使用者・指揮命令監督者が「あいまい化」することによる労働災害発生率の増加(製造業における人身上の災害増加、情報サービス業による精神疾患の増加)
・規制緩和により新規参入業者が急増し競争激化する分野において過重労働が恒常化し、これが一般人を巻き込む事故につながっていること(特に、物流業)
を憂慮しており、これらの問題を改善するという観点から、年々規制発動を強化する方向にあると思われます。
偽装請負問題についての法務対応上のポイントですが、以上のような行政のスタンスを十分ふまえ、詳細な行政解釈をきちんとスタデイーした上で、指揮命令権の所在をはじめ、適正な請負となるよう契約内容や業務体制を厳しい日で見直すことが必要です。
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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