1 概説
企業が事業を展開する上では、
「モノ」
という経営資源との関わりなしに進めることはできません。
歴史的には、商業が
「モノ」
の製造や取引を中心に展開され、これに合わせて取引法務・契約法務が発展してきましたので、
「モノ」
と契約法務の関わりは最も古くから存在し、その意味では
「モノ」
に関わる法務(調達・製造関連法務)は成熟した法分野であるといえます。
2 実践上の課題と対応の基本
(1)近時における偽装問題
自動車や温風機の欠陥隠蔽問題、食品に関わる原産地表示や賞味期限偽装の問題、毒物混入米流通問題や廃棄物処理や環境汚染問題等、近時、製造分野において法務トラブルが頻出しています。
また、ヒューザー社による大規模な耐震偽装など、これまでの建築物一般への信頼を根底から覆すような大規模かつ広範な建築偽装問題も発生しました。
最近では、食品表示偽装事件も相次いでいます。
農林水産省や都道府県が2008年にJAS法に基づいて行った改善指示件数は、前年より34件増加し、合計118件となっていますし、改善を指示された業者の中には、不正競争防止法違反の疑いにより、捜索を受けるものも増加しています。
このような状況の中、
「法令遵守より効率優先」
という経営姿勢や製造管理状況に対して消費者や社会一般の厳しい目が向けられるようになりました。
法律上も、2009年5月の農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)改正により、原産地偽装表示等を行った場合の刑事罰が設けられるなど、規制が強化されています(2年以下の懲役又は200万円以下の罰金、法人については1億円以下の罰金)。
企業等の従業者等が、その事業活動として違法行為を行った場合には、当該従業員等のみならず、事業主である法人又は個人も処罰されることになります(両罰規定)。
例えば、JAS法29条は、従業員が原産地の偽装表示を行った場合には、当該従業員のほか、事業主自身も処罰することとしています。
加えて、公益通報者保護法の施行やネット掲示板の普及等の環境の変化もあり、内部告発が一般化し、企業がこれまで内部で隠蔽してきた偽装を隠し通せない状況になってきました。
このように、
「モノ」
に関わる企業にとっては、その姿勢が厳しく問われる時代になってきたといえます。
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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