01288_知的財産法務>知的財産及び情報マネジメント法務。経営資源「チエ」の調達・活用に関する個別法務課題>特殊な課題・新たな課題>2011年特許法改正その2_共同発明等における冒認出願の保護

01287】の2について概説します。

特許出願の場面において、
・発明が全くの第三者に盗まれ、発明者に無断で特許出願手続が進められてしまうケース(冒認出願事例)
・企業等において共同で発明を行ったにもかかわらず、発明者の1人を「(単独)発明者」として特許出願手続が進められてしまうケース(共同出願における特許法38条違反事例)
といった事件が発生する場合があります。

以上のような出願行為は、
「真の発明者」
に対する重大な権利侵害であり、かつ、違法無効な出願であることは明らかですが、特許法上、このような事態に対する発明者の権利回復措置はほとんど整備されていません。

無論、上記各事態において、発明者(真の権利者)は、当該違法の特許出願に対して無効審判請求を行ったり、冒認出願者等に対して損害賠償請求をすることは可能です。

しかしながら、当該発明について、ほとんどのケースで出願公開となってしまっており(公開されてはじめて冒認という事態を知ることが多いので、「事態が判明したときにはすでに出願公開されている」という場合がほとんどです)、
「新規性がすでに喪失している」
という理由で、同一発明では、二度と特許が受けられないことになります。

したがって、冒認被害に遭った
「真の発明者」
は、二度とその地位を回復することができないことになってしまいます。

この点、最高裁は、そのような事態は、真の発明者の保護に欠けるとして、真の発明者からの特許権移転登録を認めました(生ゴミ処理装置事件 最高裁平成13年6月12日判決)が、法的根拠が乏しく、
「超法規的措置」
などと評する論者も出てくるほど特異な構成でした。

以上の状況を改善すべく、本改正が行われ、上記の最高裁の措置に、明確な法律上の根拠が付与される形となっています(改正法74条「特許権の移転の特例」参照)。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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