01333_債権管理・回収法務>特殊な課題・新たな課題

1 集合債権譲渡担保

譲渡担保とは、債権者が債権担保の目的で、所有権等の財産権を、形式上、債務者から譲り受け、被担保債権の弁済をもってその権利を返還するという方法をとる担保の一種ですが、そのうち、債務者が取引先に対し有する複数の売掛金債権(将来、発生する売掛金債権も含みます)等の金銭債権をまとめて担保にとる方法を、特に集合債権譲渡担保といいます。

これは、1998年に
「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」(以下「動産・債権譲渡特例法」といいます)
が制定され、それまで、第三者に譲渡担保を対抗するために必要であった
「確定日付による譲渡通知」
等がなくとも、簡便な対抗要件(債権譲渡登記制度)のみで足りるようになったこともあり、徐々にその利用価値が高まっています。

なお、現在、東京法務局が全国の債権譲渡登記に関する事務を取り扱っています。

2 集合動産譲渡担保

「集合債権譲渡担保」
同様、複数の流動する動産をまとめて担保にとる方法(例えば「倉庫内の商品一切」といった形で特定した動産担保)を、特に集合動産譲渡担保といいます。

これも、
「動産・債権譲渡特例法」
により、簡便な対抗要件(動産譲渡登記制度)のみで債権者が設定した譲渡担保権を第二者に対抗することができるようになりました。

3 財産開示手続

財産開示手続とは、たとえ債権者が民事訴訟で勝訴し、判決等の債務名義を得ても債務者が財産を隠匿する等して権利を実現することが困難な場合に、債権者が債務者の財産を把握するための民事執行法上の新しい制度として、2004年4月1日に施行されました。

財産開示決定がなされた場合、財産開示手続の対象者は、指定された期間内に財産目録を提出しなければならず、また、指定された期日に出頭しなければなりませんし、これを拒絶する等した場合、30万円以下の過料に処せられることがあります。

4 銀行を第三債務者とする預金差押えのテクニック

勝訴判決等の債務名義をもって、債務者の銀行預金債権を差し押さえる場合、原則として、
「債務者のどの銀行のどの支店の預金口座」
といったように、銀行名と支店名を特定しなければなりません。

しかしながら、メガバンクともなれば数十支店もありますので、債務者が預金回座を有する銀行支店を探すだけでも大変です。

そこで、最近では、予め弁護士法23条の2に基づく
「公的機関又は公的・私的な団体に対する照会制度」
を利用して銀行に対し債務者が預金口座を有する支店名を照会しておき、銀行が回答しなかったことを理由に付記し、
「支店名を特定せず、銀行の全支店を支店番号順に順位付けし、上位番号から順に、請求金額全額に満つるまで債務者の預金回座内の金銭を差し押さえる」
といった銀行預金差押命令を申立てる例が実践され始めています。

しかしながら、このような支店名の特定を行わずに行う差押え(最高裁の補足意見は、「全店一括順位付け方式」と名づけています)に関しては、最高裁は特定できているとはいえず不適法、との判断を行っており、差押命令がきた場合に銀行側において即時にどの支店のどの債権であるかが了解できるようなシステムが構築されない限り、許容される可能性は低いものと思われます。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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