01337_会計・税務関連法務>会計・税務関連法務(フェーズ0)>課題概要と全体構造>概説>財務会計の目的

企業の目的は、株主や債権者から集めた資本を用いて、取引活動等を行って収益を上げ、債権者に対して返済を行い、株主には利益を配当し、そして、適正に納税するなどの形で、営利追求の結果得た成果を各利害関係者に還元していくことです。

そして、企業の経営陣は、会計期間中企業の経営状況を正確に記録するとともに、これを一定の基準ないし原則にしたがってまとめあげ(期間損益計算)、その結果を財務内容(会計期間における財政状況及び財産状態)として、各ステークホルダーズに対して正しく報告する義務(課税当局に対しては、報告とともに申告納税を行う義務)があります。

他方、経営陣は、事業に必要な資金を確実に得るため、投資家や金融機関に対しては、常に、
「自らの経営する企業の経営状況が良好であり、投資対象として魅力的である」
旨実態と異なる報告を行う動機を有しています。

また、経営陣は、企業の負担すべき租税債務を低減させるために、税務当局に対しては、担税力を過少に表現する報告を実施する動機を有しています。

このように、経営陣は、損益計算ないし会計報告のプロセスにおいて、常に、真実の実態とは乖離した報告を実施する誘惑にさらされていますが、他方、これらの虚偽の会計報告や、虚偽ないし仮装隠ぺいにわたる会計処理を前提とした税負担減少行為については、法律上、厳しいペナルティが科せられています。

すなわち、金融商品取引法においては、会計上の虚偽報告すなわち有価証券報告書への虚偽記載行為に対して課徴金や刑事罰が定められています

また、脱税行為に対しては、税法上、重加算税や刑事罰が予定されています。

会社法においても、財務諸表の虚偽記載に対しては過料が規定されているほか、
「虚偽の会計に基づき、配当可能額を超えた違法配当が実施されたケース」
に対しては刑事罰が科せられます。

前述のとおり、財務会計は、
「企業の財政状況及び財産状態を正確に記録・計算し、会計期間における計算結果を、企業の利害関係者に対して、正しく報告する」
という目的を担い、企業に対して、定量的にモデル化された企業の事業活動の情報の作成・報告を義務づけています。

他方、
「定量的なモデル化」
の方向性は、企業の利害関係者の情報ニーズ毎に異なります。

そこで、企業が会計期間に行った財務会計の報告に際しては、企業の利害関係者の情報ニーズの多様性に伴い、会社法や金融商品取引法といった各法律により規制(報告のルール)が加えられることになります。

会社法や金融商品取引法といった各法規制に基づき行われる会計を制度会計といい、この段階において会計は複数以上存在すると整理されます。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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