01495_破産とは

自己破産を、民事再生との違いをいいますと、破産のメリットは、何といっても一切返済する必要がなくなるチャンスが生まれることです。

法人の破産の場合、そもそも法人格が消滅しますので、返済もヘッタクレもありませんが、個人の場合は、その後の人生の再生には非常に大きな意味と価値があります。

個人に関していいますと、民事再生の場合は
「再生計画」
というのがあり、終わったあともしばらくは払い続けなければなりませんが、自己破産で、免責決定を受けられると、キレイサッパリ債務がなくなり債権者と縁が切れます。

一般的なイメージでいいますと、
「破産宣告」
というセレモニーとは、誰かから怒られたり、非難されたり、罵倒されたり、文句をいわれたり、犯罪者の如く扱われる、というネガティブなイメージが持たれるかもしれません。

しかし、
「破産宣告」
の本来的な意味のは、
「目の前の破産申立人の方が現状の資産、収入、債務、支出を考えると、債務が到底払えない状態にありますね」
ということを、公的な第三者が確認して、この確認した内容を表明する。

それだけです。

単なる
「事実の確認と表明」
であり、何か非難されたり、叱られたり、文句や非難をされたり、という懲罰的要素は皆無です。

そもそも、なぜ、こんな
「ある経済主体の経済状況に関する事実の確認と表明」
という手続きが存在するのかというと、ある経済主体(人間であったり、企業であったり)の
「経済的な状態」
というのは、第三者には全くわからないからです(本人すらよくわかっていないケースもあります)。

すなわち、ある人が借金を負っていたり、ある会社が多額の負債を抱えていても、十分な収入があったり、資産があれば、問題なく、やっていけます。

他方で、一見すると豪邸に住んでいて、いい車に乗っていても、支出と収入のバランスが悪く、また現金資産がないので支払いができずに、来月の支払いがパンクして破綻する、という人もいたりします。

このように、ある人が経済的に健全な状態か、それとも破綻状態なのか、というのは一見して判別できるものではなく、また、本人が
「厳しい、厳しい!」「苦しい、苦しい!」
あるいは、
「好調、好調、絶好調!」
とアピールしても、実は逆の状況であったりする場合もあるのです。

ですから経済状態を確実に把握して明確化するには、公的機関の確認プロセスを経由しないと判断できない、ということがあるのです。

そこで
「『この申立人は、第三者による確認調査をしたところ、たしかに経済的に立ち行かなくなったので債権を弁済できない状態にある』
ということを、公的に確認して宣言するという、非難や懲罰の要素もない単純な事務手続きが、今後の処遇を検討する上で必要になるので、
『破産宣告』
という手続きを国家として整備した」
本当にこれだけの意味として、この一見しておどろおどろしい名称の手続きが存在するだけです。

ですから、破産宣告自体、非常に事務的な手続きとして行われますので、緊張する必要もビビる必要もありません。

破産というと、様々なネガティブで印象がつきまといがちですが、焼きゴテも、足につける鎖も、収容所での強制労働も、一切ありませんので、ご安心して差し支えありません。

このように、破産宣告自体は、事務的でドライな手続きであり、あまり意味がないのですが、個人の民事再生の場合、その後の
「免責」
には非常に大きな意義と価値があります。

破産宣告の後、次に破産申立人の負っている債務をチャラにするか、チャラにしないか、という
「徳政令発布」
の手続きが行われますが、これが
「免責」ないし「免責審尋」
といわれるものです。

債権者平等原則に違反して身内への依怙贔屓弁済をしていないか、
ギャンブルで作った借金はないか、
財産を隠すなどの不正行為していないか、
などのチェックをして、やましいことがなければ
「免責決定」
すなわち徳政令が出され、晴れて債権が全チャラとなって経済的再スタートが切れる、という仕組みです。

破産手続きが開始されると、基本的には残っているすべての財産は、裁判所が指定した第三者の管理下に置かれた上で、これらはすべて破産手続費用に使われ、さらに残りがあれば債権者に平等に配当されることになります。

この破産申立人の財産を管理する
「裁判所が指定した第三者」
を、
「財」産を「管」理する人、
すなわち破産管財人と呼ばれます。

これは、ほぼ例外なく弁護士(破産申立をする弁護士とは「別」の弁護士。 すなわち、管財手続きが発生する事件の場合、弁護士が最低2名関わることになる )が就任します。

もちろん、この破産管財人の弁護士の先生にも活動するためのギャランティが必要です。

このギャラを事前に用意しないと、破産手続きは進められません。

この管財人のギャラ(報酬金)のバンス(前払金)が
「予納金」
と呼ばれるもので、破産手続きの規模感によって定められるお金として、破産申立に際して納付が義務付けられるものです。

言葉はややこしく、
「予納金」
というと、後から返金があるように思われるかもしれませんが、いってみれば破産管財人弁護士先生の活動資金であり、全て、管財人の先生によってお召し上げになります。

そして破産者の財産は、破産管財人によって一旦財産プール(これを破産財団といいます)に入れられ、さらにお金以外の財産は、メルカリによる断捨離をするが如く、片っ端から換金処理されていき、最終的に財産プールにはお金しかない、という状態に持っていかれることになります。

とはいえタンスや服、冷蔵庫やテレビといった生活家財等は、そのまま持っていて差し支えありません。

この種の生活家財は、管財人弁護士からみれば
「ただのゴミ」
であり、換金の手間の方がかかるからです。

10年近く乗り回した車であっても
「ゴミ」
になる可能性があるので、管財人によって財産管理されたからといって、生活にはほとんど影響ありません。

加えて、この財産プールに貯められたお金のほとんどは、債権者に分配されるはるか手前で、弁護士の追加ギャラ(管財人報酬)として召し上げられます。

こういうこともあり、破産管財人の報酬を払っても、そこから先は不足があって、到底債権者に分配できない、というときは、
「もうやっても意味がない。破産管財人の活動費用考えたら無駄。よって破産手続きを廃止します」
という宣言(破産廃止決定)が行われ、そこで強制終了です。

財産が残っていればいろいろと分配の手間暇が発生するのですが、財産が無ければ何も手続きはないので途中強制終了というわけです。

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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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