株式会社は
「法人」
の代表選手ですが、
「法務局備え置きの登記簿上でしか確認できない幽霊のような存在に過ぎず、お情けで法律上の人格を特別に認めてあげているようなもの」
です。
ちなみに、そもそも
「法人」
とは、フツーの人間と違い、
「法律上のフィクションによって、人として扱うバーチャル人間」
のことをいいます。
この
「法人」
という概念ですが、よく聞く言葉ですが、実は全く理解できない法律概念の1つと思われますので、少しこの
「法人」制度
について解説いたします。
もっとも、身近でわかりやすい例で申しますと、アイドルグループとかプロスポーツチームとか野球球団とかの集団に仮想人格を与えて、あたかも人間扱いするような制度を、
「法人制度」
ということができます。
アイドルグループを例にとってさらに説明を進めます。
昭和の時代、
「少しばかり歌と踊りのできる、『顔面偏差値』の高い青少年を偶像(アイドル)に仕立てて、その偶像を熱心に崇拝するファンやオタクたちから小銭を巻き上げるエンターテイメントビジネス」
すなわちアイドルビジネスが隆盛を極めました。
ところが、このアイドルビジネスを展開する際、最大のリスクは、
ギャランティの多寡でもめたり、
不純異性交遊とか喫煙・飲酒とかの不祥事が発覚したり、
当該アイドルが突然
「いい加減疲れたので、フツーの女の子に戻って、フツーの生活をしたい」
と言い出したり、
などといった、アイドル個人にまつわる割とつまんない都合で、多額のプロモーション投資などをしたにもかかわらず、投資が回収できなかったり、更なるビジネスチャンスをフイにさせられる危険が常に存在することでした。
要するに、
「アイドルの単体売り」
のビジネスモデルは、アイドル個人の属人性が顕著のため、ビジネスにゴーイングコンサーン(事業が永遠に存続するという理論的前提)が働かない、というリスクがあったのです。
そこで、21世紀に入ったあたりから、アイドルビジネスにも
「法人化の波(法律上正確な意味における法人ではありませんが、グループそのものを、個人と離れた『一個の仮想人格』として想定し、アイドルビジネス展開上『アイコン』として使う、という程度の意味です)」
ともいうべきムーブメントが到来しました。
すなわち、
「ホニャララ娘。」
や
「チョメチョメチョメ48」
のような、
「構成員人格とは離れた集団そのものを、個々のアイドルとは別の『アイドル』人格として、金儲けの道具にすること」
が考えられるようになりました。
このような
「アイドルグループ法人化の波」
ともいうべきビジネス革命によって、当該グループに属する個々の構成員が、
「私には女優の才能がある」と勘違いして独立して女優になりたいとか訳のわからないことを言い出そうが、
構成員に派手な異性交遊や飲酒や喫煙が発覚してグループに居座ることが難しい状況になろうが、
構成員の所属事務所とギャランティ分配でモメようが、
その他構成員個々人の都合による追放やら脱退やら卒業やらとか
といった属人的でつまんない理由ながら重大なビジネス障害となりうるインシデントを乗り越えて、グループそのものをアイコンとして継続・存続させ、その知名度と経済性を活用して、より長く、ファンから金を巻き上げる道具として活用することができるようになりました。
「ホニャララ娘。」
や
「チョメチョメチョメ48」
とかが、ただのグループ名に過ぎず、実際、歌ったり踊ったりしているのは、その個々の構成員です。
「グループそのもの」
が歩いたり、歌ったり、踊ったり、はしゃいだりしているわけではなく、グループ自体は、抽象的な存在であり、幽霊やバーチャル人間ともいうべき、実体のないものです。
ですが、実際には、
「ホニャララ娘。」
や
「チョメチョメチョメ48」
といった
「グループそのもの」
の方が、個々の構成員よりも、はるかに巨大な知名度や観客動員力や経済力を有していることは疑いようもありません。
そして、このことは、一般の経済社会においても同様にあてはまります。
ご承知のとおり、現代経済社会においては、
「株式会社」という「法人」
は、個人事業主や勤労者を含めた普通の人間様をはるかに凌駕する
「体格(資産規模)と腕力(収益規模)」
を有する巨大な存在になってしまっています。
このような
「法人」
の存在の大きさや重要性からすると、
「こういう巨大な存在のオーナーや運営責任者は、何か問題が起こったら法人に連帯して相当シビアな責任を負うべき」
という主張が、A日新聞やらA旗あたりから出てくるのも当然と思われます。
ところが、株式会社制度においては、オーナーもマネージャーも含め、誰も責任者がいない、というのが現実です。
要するに、株式会社とは、法律上
「存在も実体がなく不明で中途半端だわ、体格もデカく、腕力も馬鹿みたいに強いわ、その上、大暴れして迷惑かけても誰一人責任取らないわ」
と迷惑この上ない、無茶苦茶な存在といえるのです。
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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