第二次世界大戦末期、日本軍は、魚雷に兵士を搭乗させそのまま敵艦に突っ込ませて爆破させる攻撃方法(人間魚雷)や、航空機をそのまま敵艦に衝突させて爆破させる攻撃方法(特攻)を実施させたり、という狂った戦術を採用していました。
そして、一般国民に対しても、
「気合があれば、竹槍でB29を落とせる」
と檄を飛ばしながら竹槍を扱う訓練をさせたり、と愚にもつかないことを行っていたそうです。
ヒトもモノもカネもチエも豊富で余裕のある企業においては、
「どのようにして事業を展開すべきか」
をきちんと考えて、これを科学的な方法で組み立て、さらに現実的な行動計画に落とし込み、現場の人間には判別可能な戦術が与えられ、これが当たり前のように成果に結び付いていきます。
しかしながら、終戦末期の日本のように、科学的方法や合理的・現実的計画がなく、従業員に気合や根性や精神論で出来もしないノルマを与えるような会社は、この段階でほぼ倒産必至の状況に陥っているか、陥りつつある、といえます。
かつては、精神論、すなわち、気合や根性によるる営業が効果的だった時代もありました。
今から30、40年ほど前までは米ソが冷戦真っ最中でした。
日本は、
「フツーのものをフツーの値段でフツーに作れる」
という稀有な工業国家として、
「世界の工場」
としての地位を築き上げました。
経済はインフレーション傾向にあり、作っても作ってもモノが不足し、作ればすべてモノが売れる時代でした。
現在のように、マーケティングだの営業戦略だの細かいことをグダグダ考えなくても、気合を入れれば、なんとか需要家がみつかり、あとは押しの一手で在庫を持ってもらうことができる、そんな時代でした。
そういう時代においては、能書きをたれるよりも行動こそが重要で、まさしく営業は気合であり、根性だったのです。
この時代、
「売上」
とは、
「営業マンの数×一人当たり売上」
で計算されました。
いかに多くの営業マンを採用するか、そして、いかに営業マンを働かせるか、が重要だったのです。
しかし、冷戦が終了し、世界市場が単一化し、供給が過剰になりはじめました。
そして、東欧諸国や南米や中国が競争に参入し、圧倒的な価格競争力で
「世界の工場」
という地位を日本から奪取しにかかります。
加えて、日本国内においては社会が成熟し、デフレ・低成長時代になり、モノ余りが顕著になっていきました。
もはや、気合や根性や精神論だけでは売れない時代になったのです。
すなわち、
「フツーのものをフツーに作れる」
というのは希有でもなんでもなく、
「ビミョーなものを、イジョーな安価で作れる中国や東南アジア諸国のメーカーに簡単に負ける」
ことを意味するような時代になったのです。
こんな時代の到来とともに、日本には
「企業が、フツーのものを大量に作れば、フツーに在庫が積み上がり、フツーに会社が死んでしまう時代」
が到来したのです。
また、消費者規制が強化されるようになり、気合や根性で売ろうとすると、逆に消費者契約法違反だの特定商取引法違反だの、と騒がれる時代が来たのです。
その意味で、気合、根性、精神論で営業を展開する企業は、
「すでに四半世紀以上時代遅れの経営を行っている」か、
「消費者契約法や特定商取引法を無視ないし軽視した経営を指向している」か、
のいずれかまたは双方である、
といえます。
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著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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