01575_企業(株式会社)は生まれてすぐに、ハンデなしのガチンコ競争社会に放り込まれる(2・完)_企業(株式会社)の場合、取引ビギナーは保護されるか?

生身の人間の場合、半人前の人間、すなわち
「未成年」
は、法による手厚い保護を受け、
「ちょっとタンマ」
「やっぱ、アレ、キャンセル」
といった得手勝手な振る舞いが許されます。

このことは、企業の場合にもあてはまるのでしょうか?

よく、自分の能力を勘違いして、サラリーマンを辞めて、いきなり会社を起こしたりする方がいます。

こういう方のビジネス知識や取引上の経験値は、たいていの場合、赤ん坊並みで、事業計画等を聞いていると、
「こいつ、脳ミソがはちみつ漬けになっとるんちゃうか」
と首を傾げたくなります。

この種の社長ビギナーから、ビジネスプランとかを聞いていると、イタい、というか、危なっかしくて仕方がないのですが、とはいっても、まともに弁護士をつけるだけのカネがありません。

といいますか、そもそも、社長(ビギナー)自身、
「リスク予防のためにカネをまったく理解していません。

そういうわけで、この種の
「赤ん坊企業」
は、たいてい、出だしからトラブルに巻き込まれて、いきなり倒産の危機に陥ったりします。

危機に陥った際、このようなベンチャー企業のビギナー社長さんたちは、
「そんなのひどいよ。こっちは何にも知らないんだから。助けてくれるのが普通でしょ。そういう法律とかってあるんでしょ。それを使って救済するのが弁護士でしょ」
とか、かなり“イタい”ことをのたまわります。

では、生まれたばかりの“赤ん坊企業”の無知や経験不足による失敗を、法は救済してくれるのでしょうか?

答えはNO。

Absolutely NOです。

結論からいいますと、民法にも商法にも会社法にも、
「企業(会社)について、生身の人間のように、知識や経験のない若年層に対し行為能力を制限したり、それに伴う取消権を与える」
といったシステムはありません。

社長がどんなに未経験のド素人であっても、会社は、誕生したらその日から
「商法上の『商人』」
すなわち
“ハンデなしのガチンコ競争に耐えられるプロの商売人”
とオートマチックにみなされてしまうのです。

ということは、3日前にできたばかりの会社であろうが、100年続いている会社でろうが、会社は、皆等しく、モノを買ったり売ったり、借金をしたり、担保を提供したり、投資をしたり、といったことは制限なくできるのです。

したがって、会社の場合、
「失敗しても大丈夫。まだ、若いからやり直せる」
と悠長なことを吐かしている暇はありません。

設立間もなく、ジャッジミスにより大きな失敗をしてしまえば、試行錯誤や再チャレンジなどの機会を与えられることもなく、即倒産という結果になるのです。

死亡の形態は、破産や解散・清算といった立派なお葬式のようなセレモニーを開催する場合もありますが、若年死した企業は、たいてい葬式を上げるカネもないので、登記上ほったからしになったまま、休眠法人として野垂れ死にする、というケースが圧倒的に多いようです。

生身の人間の場合、弱者たる子供は、親もさることながら、祖父母、兄弟、あるいは地域や社会全体から、愛され、保護され、温かい目で育てられます。

ところが、会社に関しては、生まれたその日から、ガチンコ競争の取引社会に放り出されます。

安直にハンコ1つ押しただけでも過酷な取引上の責任を背負わされますし、取引社会のルールを知らずに多額の借財を負う羽目になっても、
「そんなの法律を知らない方がどうかしている」
といわれます。

若いから、青いからといって、誰も保護してくれませんし、
「どんなに酷い騙され方をしても、騙される方が常に悪い」
といわれ、その結果、破綻状態にあっても、放置されたまま、野垂れ死にした姿を晒しますが、そんな状態になっても、見事に誰も手を貸そうとしません。

ゴーイング・コンサーン(企業が永遠の生命を持つ、という理論的前提)は、強引なコンサーン(仮定)、さらに端的にいいますと、完全な虚構(ウソ)であり、
「日本の企業の短命ぶりは、(10年近く内戦が続いたことにより)“地球上で最も寿命が短い国”であるシェラレオネより短い(※内戦が終了した現在では事情は別の状況であることは否定しません)」
という厳然たる事実があります。

シェラレオネの状況は、我が国社会のように
「弱者たる子供は、親はもちろんのこと、祖父母、兄弟、あるいは地域や社会全体から、愛され、保護され、温かい目で育てられる」
という平和で悠長なものではないであろうことは想像に難くありません。

おそらく、同国社会は、生まれてすぐ過酷な生存競争にさらされ、若いからといって、誰も保護も支援もしてくれず、騙されても、騙される方が悪いといわれ、食えない状態にあっても放置されたまま、野垂れ死の姿を晒す、この世の地獄のような光景ではないか、と推測されます。

日本の企業社会も、そんな地獄のような社会です。

だからこそ、
「企業は永遠の生命を有する」
という理論的前提は、虚しいお題目となり、1年後に3割の企業が死に、5年後には4割が消え、10年間続く企業は25%しか存在しない、ということになるのだと思います。 

(完)

運営管理コード:HLMGZ22

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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