「ヒト」
「モノ」
「カネ」
「情報・技術・ノウハウ」
といった各経営資源を調達・運用した企業は、企業内部に
「商品在庫」
や
「サービス・プラットフォーム(役務提供のための設備・人員等)」
という形で
「付加価値(未実現収益)」
を蓄積していきます。
次に、企業は、営業・販売活動によって、これら付加価値(未実現収益)を収益として実現していくことになります。
「『商品』や『サービス・プラットフォーム』を『カネ』に変える営み」
のことを、日常用語で
「営業」
といいます。
すなわち、どんなに立派で高機能の商品でも、売れるべき期間売れずに長く売れない状態が続けば、不良在庫として、事業活動上も税務上も邪魔なものとして企業に害を与え続け、それでも売れなければ、陳腐化・品質低下し、ただの廃棄物(ゴミ)となります。
「サービス・プラットフォーム」
も同様です。
バブル期前後に出来た遺物的なテーマパークの中には、客が来ないし、
「ショバ代(固定資産税)は取られるわ、邪魔だわ、不気味だわ、と社会的には有害物であり、壮大なオバケ屋敷兼ゴミ屋敷となってしまうもの」
も相当数存在します。
ゴミなら捨てればいいのですが、最近では、うっかり廃棄物の捨て方を間違うと、産業廃棄物処理法違反で書類送検される世の中です。
このように、企業にとって、営業活動は、もっとも重要かつ意義ある活動として考えられます。
なお、営業活動の成果として、商品がカネに変わり、この
「カネ」
が経営資源となって、ヒトやモノやチエを生み出す原資になり、最後は、また商品となり、カネに変わり、というサイクルを繰り返す。
これを、小難しい言葉で
「営業循環」
などと表現したりします。
このような循環を繰り返す中で、企業は拡大再生産を繰り返し、企業価値を高めていくのです。
いずれにせよ、企業にとっては営業活動がもっとも重要です。
1 顧客を発見し、
2 顧客の「欲求、現実、価値」を理解し、特定し、
3 これに適合する形で、自社の商品やサービスを提供していく
アホではできない高度に知的なチャレンジです。
なぜなら、
「カネ」
は万人にとって命や健康に次ぐ貴重かつ高価なもの(借金苦で自殺したり、脱税して服役する人がいるなど、人によっては、カネは命や健康より貴重と判断されます)だからです。
すなわち、それほどまでに貴重で大切な
「カネ」
を、暴力や脅迫によらず、
「欲求を刺激し、価値をわからしめる」
というジェントルでエレガントな方法だけに依拠して、自発的かつ任意に、
「商品」
や
「サービス」
と交換に、手放させる、という営みは、考えてみれば非常に困難で高度に知的な能力を要求される、ということは理解されると思います。
実際、企業においては、デキる人間ほど営業に回されます。
よく、テレビドラマ等では、営業マンというと、できないサラリーマンの典型例のように扱われますが、実際の企業社会においては、営業部隊がもっとも発言権をもっており、事業会社の社長は、営業のトップが就任する例がほとんどです。
ただ、営業のあり方も、日本の社会構造や産業界の変化に伴い、大きく変質していることも事実であり、そういう状況も踏まえないと、企業法務を含めたビジネスや仕事そのものをうまく前に進めることはできません。
そこで、以下、
「営業」
という仕事のお作法について、特に時代の変化をふまえながら、現代における営業活動の基本を、私なりに解説してまいりたいと思います。
著者:弁護士 畑中鐵丸
著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
初出:『筆鋒鋭利』No.91-1、「ポリスマガジン」誌、2015年3月号(2015年3月20日発売)
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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