01676_企業法務スタンダード/企業法務担当者(社内弁護士)として実装すべき心構え・知見・スキル・仕事術、所管すべき固有の業務領域(19)_「君はデキる」と役員から褒められる、「法務課題・対策」のスマートプレゼン術

1 経営陣向け法務啓発・法務プレゼンの難しさ

代表取締役や常務会等の意思決定機関、取締役会のようなオーソライズ機関、いずれに対する啓発ないし政策提言であれ、
「物を申す」べき対象者
は法務スタッフにとっては指揮命令系統上の上位者であり、彼らは日々のビジネスジャシジメントに追われ、多忙なことは明らかです。
警告を行ったり、意見を具申すべき対象者がこのような状況ですと、抽象的な法令リスクを通りー遍の表現で伝えようとしても疎まれるだけであり、本質的なことが伝わる前にコミュニケーションが断絶してしまう場合があります。
このような状況を克服するためには、より具体的かつリアルにリスクを述べるような工夫が必要になります。

2 経営陣は、「経営の専門家」であっても、「法律の専門家」ではない

経営者は、経営の専門家であっても、法律の専門家ではありません。

他方で、法律の条文、思考枠組、運用メカニズム、限界領域の解釈、運用相場観、すべてが、腹が立つくらい、難解で高尚で、一般人の理解を拒絶します。

3 伝える側(法務担当者サイド)に伝達の工夫が必要

企業法務スタッフとしては、伝達する法情報の正しさに意識を向けることはもちろんですが、多忙な経営幹部に適切な注意を促すべく表現・伝達の方法に創意工夫が必要です。
すなわち、
「これは法令違反」「あれも法令違反」
といった単なる
「ダメ出し」
だけでも不十分であり、打開策や回避策を複数併せて進言するような創造性・柔軟性が必要となります。
これら経営幹部への啓発がなされることにより、経営幹部による合理的な基本方針の策定がなされることが期待されます。

4 ダメな法務プレゼン・法務啓発例

抽象的で難解だけど、具体的に何を指しているか意味不明な言葉を唱えるような非知的なプレゼンはNGです。

例えば、企業内の法務部員が、経営陣からの法的諮問や依頼部署からの法律相談に対して、
「コンプライアンス的に問題です」
という応答をすることがありますが、この
「コンプライアンス的に問題です」
という応答は、法務戦略としての思考を放棄したことを示しており、法務部員としてあり得ない怠慢さを表すものと考えられます。

では、正確無比なデータをそのまま経営陣に対して提出すればいいか、となると、これもNGです。

5 「データ」を投げつけるのではなく、「リテラシー」や「ストーリー」が書かれた「コンテンツ」を使ってプレゼンする

知的専門分野に関する文書は、3つに大別されます。

1)「データ(文字や符号や数値の集合に過ぎません。データが記述・表現できるのは、単純で中立で無機質で無意味で無味乾燥な事実ないし状況だけ)」
2)「リテラシー(データを適切に理解・解釈・分析し、意味と価値を有するように、再記述したもの、あるいはそのような本質的な知的能力)」
3)「ストーリー(特定の状況や課題に対応して、目的性と方向性を有した思考を、明確化・ミエル化・カタチ化・言語化・論理化・構造化・共有可能化・記録化(痕跡化ないし証拠援用可能化や改ざん不能化)したもので、リテラシーに従って再構成されたデータや情報の断片を組み合わせて〔作成者が意図的につまみ食いや再構築して〕作成されたもの)」
4)「コンテンツ(読み手の理解度や知的水準に併せて、読み手がストレスなく理解できるような工夫が加えられた価値ある創作物)」
です。

条文や法律や漢字がやたらめったら多い分厚い法律書は、
「データ(文字や符号や数値の集合に過ぎません。データが記述・表現できるのは、単純で中立で無機質で無意味で無味乾燥な事実ないし状況だけ)」
であって
「コンテンツ」
ではありません。

経営陣や一般人やその他法律の素人の方々が、いきなり
「データ」
を示されたとしても、たとえ、提示されたものがどれだけ正確無比でも、

となるだけです。

法務担当者として、経営陣を啓発する場合、提示すべきは、
「データ」
であってはならず、
「リテラシー」か「ストーリー仕立て」にした「コンテンツ」にすべき
です。

(1)「データ」と「リテラシー」

「データ」と「リテラシー」の違いですが、例えば、


株式会社制度に関する説明を探してみると、
株式会社とは、社会に散在する大衆資本を結集し、大規模経営をなすことを目的とする。当該目的を達成するためには、多数の者が容易に出資し参加できる体制が必要である。そこで、会社法は、株式制度(104条以下)を採用し、出資口を割合的単位として細分化した。また、出資者の責任を間接有限責任(104条)とし、社員は、債権者と直接対峙せず、また出資の限度でしか責任を負わないようにしたのである
といった類の記述が見られます。
これじゃあ、まるで外国語ですね。
一般人でもわかるように
「翻訳」
して解説します。
日本語のセンスに相当難のある人間が書いたと思われる上記文章が、伝えたかったことは、
デカい商売やるのには、少数の慎重な金持ちをナンパして口説くより、山っ気のある貧乏人の小銭をたくさんかき集めた方が元手が集めやすい。とは言え、小口の出資しかしない貧乏人に、会社がつぶれた場合の負債まで負わせると、誰もカネを出さない。だから、『会社がぶっつぶれても、出資した連中は出資分をスるだけで、一切責任を負わない』という仕組みにしてやるようにした。これが株式会社だ
ということです。

01502_株式会社には「責任者」などという者は存在しない1「有限責任」とは社会的・一般的には「無責任」とほぼ同義

という例を挙げると、前者の正確無比だが難解な説明が
「データ」
であり、後者の腹が立つくらいわかりやすい
「日本語の翻訳」

「リテラシー」あるいはこれに近いもの
といえば、イメージできるかと思います。

さらに、わかりやすく
「リテラシー」
として再記述すれば、
「有限責任」とは社会的・一般的には「無責任」とほぼ同義
という言い方になろう、と思います。

(2)「リテラシー」と「ストーリー」

そして、
「有限責任」とは社会的・一般的には「無責任」とほぼ同義
という、
「ある意味、真っ当な常識に逆らい、常識人にとっては、やや耳障りな『リテラシー』」
をそのまま、ストレートに(経営の専門家であっても、法律の素人で、常識というバイアスに罹患している)経営陣に伝えると、当然、反感を買います。

そこで、「ストーリー」の出番です。


代表的な事件としては、
「AIJ投資顧問事件」
で、運送会社や建設会社、電気工事会社など中小企業の厚生年金基金を高利回りで運用するなどと称し、2011年9月末時点で、124の企業年金(アドバンテストや安川電機といった大企業の企業年金も含まれていたようです)から1984億円の資産の運用を受託していましたが。
しかし、実際は、2003年に年金の運用を開始した時点で預かった資金の半分を失っており、2008年には損失が500億円にまで膨れ上がり、その後は、粉飾決算して、損失を隠し続けて資金集めをしていました。
結局、関係者は詐欺で告訴され、投資顧問会社も子会社の証券会社も破産し、預けたお金は消失しました。
このとき、顧客への説明として
「ケイマン籍の子会社を通じ日経225オプションの売り戦略を主力としている」
とのセールストークでだったようです。
この
「ケイマン籍の子会社」
の実体や背景等については、当初、年金基金の代理人や破産管財人も回収を企図して相当調査したものと思われますが、その後も具体的な回収成果については報道もなく、最終的に7%程度になったと言われる債権者配当割合等を考えると、雲散霧消してしまったと思われます。
「ケイマン籍の子会社」
は、千数百億円もの金銭を預かっていたようですが、こんな無責任なことをやって、タダで済むものなのでしょうか。
担当者とか責任者とかそういった関係者が出てきて説明してもよさそうですが、事件としては、
「消失」「消えた」
と、なんとも頼りない結末になっているようです。
お金がドライアイスのように
「消える」
わけはないのであって、バクチで消えたのか、盗んだのか、飲んだり食ったりして使ったのか(1千億円以上も飲み食いしたら痛風を発症するかもしれず、生命や健康をリスクにさらす行為ですが、できなくはありません)、ミサイルを買ったりロケットを飛ばしたりといった尋常じゃない無駄遣いをしたのか等、何らかの背景事実が存在するはずです。

加えて、盗むといっても、現金でもっていくとしたら、1400億円だと、1万円札で14トンになりますし、ドルでもそのレベルのボリューム感なので、まずあり得ないので、おそらく、振込送金をしているはずで、振込送金をたどっていけば、お金の流れは相当程度解明できるはずです。
ですが、
「消失」
というのは、なんとも不可解で、納得できない説明であり、逆に言えば、
「カネを預けた先の民間企業相手に債権者や利害関係人として調査を求める」
という非常に当たり前なことを要求しただけにもかかわらず、ものすごい障害に遭遇し、事実上断念したのであろう、と推測されるところです。
ただ、これは構造上、当初から想定されているリスクが実現しただけ、とも言えます。
これは、LLCとかLLPという横文字の本質的意味を読み解けば簡単に説明できる話です。
LLCとは、Limited Liability Corporation(有限責任会社)の略であり、LLPとはLimite Liability Partnership(有限責任組合)の略です。
両者に共通する、このLimited Liability(有限責任)、響きとしてはなんだかカッコいいし、日本語の
「有限責任」
という言葉ないし概念も、かつて存在して聞き覚えのある
「有限会社」
等の言葉としては、ある程度馴染みのあるもので、それなりの、しっかりとした責任をイメージさせてくれます。
しかし、このLimited Liability(有限責任)とは、
「しっかりとした責任」
とは全く逆の実体を内包する概念であり、Limited Liability Corporation なりLimite Liability Partnership が、どれだけ関係者に迷惑をかけ損害を被らせようが、法人ないし組合の出資者は、出資した金額がなくなるだけで、それ以上一切の責任を負わない、という意味です。
とはいえ、1千数百億円もの金銭を預かるわけですから、さぞデッカイ出資金があって、会社の構えも立派で、従業員が何百人も働いているイメージを彷彿とさせてくれそうですが、実際は、資本金ないし出資金は1$とかそのくらいで、会社のオフィスはなく、従業員はおらず、私書箱の中でのみ存在する、ペーパーカンパニーというか幽霊法人がほとんどです。
Limited Liability Corporation なりLimite Liability Partnershipに出資したオーナーがやってきて
「今回の事件ではいろいろご迷惑をおけけしました。いろいろ紆余曲折あってお預かりした大事な1千数百億円(※1千数百円ではない)を消失させてしまいました。責任を痛感し、出資金全額をもって有限責任を果たします」
といっても、資本金ないし出資金の1$を放棄するだけ。
要するに、Limited Liability(有限責任)という御大層な形容詞ですが、一般的な言葉に翻訳すると、No Liability(無責任)という意味です。
年金基金の担当者が、大事な虎の子を預けた先は、遠い遠い異国の離れ小島にある、
「No Liability Coporation(無責任会社)やNo Liability Partnership(無責任組合)」
ということです。
これを、預かった会社ないし法人から観察すると、
「どこか遠い国のお金持から、1千数百億円(※1千数百円ではない)ものお金が振り込まれて、どんなに好き勝手やってお金が全額なくなっても、弁償するのは1$」
という状況です。
この状況で、
「食い物にするな」
という方が不自然であり、無理筋でしょう。

00262_「LLC(ないしLLP)」なる法人に多額のカネを預けるリスク

と、具体的な事例を踏まえて「ストーリー」を提示すると、
「有限責任」とは社会的・一般的には「無責任」とほぼ同義
という、やや、挑発的で、世間の常識を逆なでするような
「リテラシー」
も、(不承不承であっても)常識人である経営陣も納得せざるを得ない、ということになります。

(3)「コンテンツ」を創作してプレゼンする

「コンテンツ」とは、
・「リテラシー」を改善・向上させるような本質的なことが書いてあったり、
・「リテラシー」を用いて状況が改善するプロセスを描いた「ストーリー」の、
いずれかです。

なお、
「リテラシー」
をそのまま提示する際、どうしても上から目線で説教臭くなりますし、
「(法務担当者とはいえ)下っ端」
から啓蒙されてそれを愉快に思う経営陣などこの世にいませんので、言い方や口の利き方には格段の注意が必要です。

また、自分で言いにくい場合、
「外部」の「専門家」

「性能の良いメガフォン」
のように使って、自分の代わりに言わせることも検討する価値があります。

「専門家」
であれば、経営陣も
「上から目線」
で説教されることも受け入れて啓蒙を是とすることもありますし、最悪、経営陣が説教や啓蒙を拒否して、あるいは、(正しいが、主観的には)不愉快な内容に激怒したとしても、
「外部」の人間
なので、ダメージは回避・転嫁できます。

6 「頭がよく、正確な知識がある」からといって、「リテラシー」を実装し、「ストーリー」を作れ、「コンテンツ」を創作できる、とは限らない

ここで、リテラシーだの、ストーリーだの、コンテンツだの、といいましたが、
「データ」
に詳しいからといって、その人間(法務担当者であれ、社内弁護士であれ、外部の顧問弁護士であれ)が、
リテラシーに長け、
ストーリーを語れ、
コンテンツを作成できるか、
というと、そうとは限りません。

むしろ、データばかりマニアックに追いかけている人間は、教養や相手への配慮や愛嬌や想像力がなく、リテラシーが欠如し、ストーリーを描けない可能性があります。

そして、役員に、法律に関する経営課題を提議する際、データを羅列しても、
「無機質で無意味で無味乾燥な事実ないし状況を示す文字や数字や符号の羅列」

「(法務担当者とはいえ)下っ端」風情
から、上から目線で、暴力的かつ無愛想に投げつけられた、と感じられ、辟易されるだけとなります。 

経営陣には、
「リテラシー」と「ストーリー」

「コンテンツ」を創作して語るべき
であり、それが、
「刺さる」プレゼンの極意、
という言い方になります。

7 経営陣、ひいては企業全体として、迫りくる現実的なリスクや課題の発見特定を阻害するもの

企業のリスク管理、なかんずく法務リスク管理や有事対処に失敗するのは、正しいリスク情報(リスクに関するメタ認知〔客観認知・俯瞰認知〕、リスク重篤さの定性・定量両面の評価・解釈、ストレステスト、展開予測)が意思決定者である経営陣に伝わらず、共有されず、錯誤状態・混乱した状態のまま、何もしないか、後手後手に回るか、誤った対処をするからです。

(1)経営陣の知ったかぶり

そして、この現象の根源的原因は、リスク管理に携わる実務担当者の
「伝える力」の貧困さ
と、
企業役職員の知ったかぶり
によるものです。

企業の役職員が、法的リスクやコンプライアンス課題を正しく認識把握できない事態に陥る原因としては、属人的なものもあります。

くどいようですが、企業の役職員は、経営(効率的な金儲け)については詳しくても、法律の専門家ではありません。

他方で、法律の条文、思考枠組、運用メカニズム、限界領域の解釈、運用相場観、すべてが、腹が立つくらい、難解で高尚で、一般人の理解を拒絶します。

経営陣も、法律のことについて知らないなら知らないで、
「知らない」「わからない」「理解できない」
と謙虚にギブアップしてくれたらいいのですが、
「判読不能な象形文字」
にしか見えていない
「難解な漢字の羅列である特殊文学である法律条文」
を目にしても、
「無知をさらけ出すと沽券に関わる」
と考えるためか、企業の役職員は、エラそうに知ったかぶりをしてしまいます。

(2)法務担当者の「伝える力」の貧弱さ

また、
「データ」は扱えても、
「リテラシー」が欠落していて、
「ストーリー」を創作する創造力がなく、
「コンテンツ」に仕上げるスキルを欠如した、
法務担当者(リスク管理を実施する実務担当者)側にも問題があります。

(経営や数字には詳しいが)経営陣が「法的には」無知で、
経営陣に対して「刺さる」プレゼンができない法務担当者が、
「高尚で難解で抽象的で意味不明な法的専門用語」
を羅列して、
リスクに関する議論をしても、
結局、誰も理解されることなく、素通りされていく、という事態を招きます。

(3)東芝の悲劇


電機メーカー東芝は、7125億円もの損失を原子力事業全体で発生させ、2016年4~12月期の最終赤字は4999億円となり、同年12月末時点で自己資本が1912億円のマイナスという、債務超過の状況に陥りました。
この状況の原因となったのは、東芝傘下のウェスティングハウスは、2015年末に買原発の建設会社、米CB&Iストーン・アンド・ウェブスターを買収した際、買収直後に、ある価格契約を締結したことにあります。
複雑な契約を要約すると、
「工事で生じた追加コストを発注者の電力会社ではなくWH側が負担する」
というものでした。
原発は安全基準が厳しくなり工事日程が長期化し、追加コストは労務費で4200億円、資材費で2000億円になりました。
しかし、問題は担当者以外の経営陣が詳細な契約内容を認識していなかったことにあり(機能的非識字状態)、さらに言えば、この「価格契約」が極めて不利で合理性がない契約、すなわち狂った内容であったにもかかわらず、このリスクを発見・特定・認知できず、リスクに気づかないまま契約締結処理を敢行したことにありました。
原子力担当の執行役常務、H(57)らは「米CB&Iは上場企業だったし、提示された資料を信じるしかなかった」と悔しさをにじませた、とされます。
この事件をみていただければおわかりかと思いますが、「課題が発見されないこと」の恐ろしさが明確に書かれています。
東芝の経営陣ないし担当役員が、もし、課題、すなわち、この価格契約の法的リスクを正しく理解・認識していたら、漫然と放置することなく、何らかの対処を取っていたはずです。
契約上、追加コストを負担しないような取り決めをしておく交渉をしたはずですし、最悪、ディールブレイクさせ、契約自体をやめてしまってもよかったはずです。
回避行動を取る前提として、予見や認識の段階で、躓いていた、というのがこの事件の本質です。
「リスクや課題を知るなんて簡単だし、誰でもできる」
そう思われている方は多いかもしれませんが、実際は、天下の国際的大企業の経営陣すら「リスクや課題を知る」程度のことすら、まったくできていないのです。

00759_企業法務リスク発見(抽出)・特定の手法1:日本の産業界において、法務リスクを効果的に発見・特定できている企業はほとんどない

以上のとおり、
(経営や数字には詳しいが)経営陣が
「法的には」無知で、
経営陣に対して「刺さる」プレゼンができない法務担当者が、
「高尚で難解で抽象的で意味不明な法的専門用語」
を羅列して、リスクに関する議論をしても、
結局、誰も理解されることなく、素通りされていく、という事態を招いた場合、
その先にある結末は、
上記のとおり、原発事業が原因で債務超過に陥り、東証二部降格の悲劇を味わった東芝のように
担当者以外の経営陣が詳細な契約内容を認識していない」という状況を招き、
挙句の果てには、
事業全体の損失額は7125億円にのぼった。16年4~12月期の最終赤字は4999億円となり、12月末時点で自己資本は1912億円のマイナスだ。先達が営々と蓄積してきた利益が全て吹き飛ばされ、ついに債務超過に陥」る、
という悲惨な結末が待ち構えているのです。

8 (「法的状況」の伝達ターゲットである)経営陣の想定知的年齢・精神年齢は11~12歳

ビジネスパースンの想定精神年齢を11、12歳として設定し、その程度の精神年齢に語りかけるくらいに咀嚼すると、
担当者以外の経営陣が詳細な契約内容を認識していない
という事態を招きません。

「ドラえもん」に出てくる野比のび太くんや、
妖怪ウォッチに出てくるケイタくんですら、
「なるほど」
「そういうことか」
と感心して食いつくような内容・本質が、
しびれるくらいわかりやすく語られていないと、
リスクを伝えたことにならない、ということです。

リスク管理の実務担当者は、そのくらい伝える力、すなわち、
「データ」から「リテラシー」を抽出し、
「ストーリー」に仕立てて、
ビジネスパースンが理解し、
心に刺さり、実感として体感できるまで、
リスクを提示する能力
を、磨くことが重要となります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

【本記事をご覧になり、著者・所属法人にご興味をお持ちいただいた方へのメッセージ】
当サイトをご訪問いただいた企業関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいたメディア関係者の皆様へ
当サイトをご訪問いただいた同業の弁護士の先生方へ

企業法務大百科® 開設・運営:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

弁護士法人畑中鐵丸法律事務所
弁護士法人畑中鐵丸法律事務所が提供する、企業法務の実務現場のニーズにマッチしたリテラシー・ノウハウ・テンプレート等の総合情報サイトです