01835_企業トップと弁護士のコミュニケーションインフラが排除されるとロクなことがおこらない

01836に書いたとおり、法務事案(リーガルマター)はすべからくトップマターであり、弁護士からトップに発するメッセージは、相応に重要性があります。

そもそも法務事案であるにもかかわらず、企業トップと弁護士との直接のコミュニケーションインフラを、 中間管理者(企業の担当者)が、
「弁護士のいうことは大げさ過ぎる」
「経営課題ではないから」
などといって、ブロックし、
「法務・安全保障課題の発見・認知」
「法務・安全保障課題に関する前提リテラシーの実装と、評価・解釈・展開予測」
「課題対処の計画立案」
を省略し、いきなり
「課題対処の着手・遂行」
にジャンプすることがあります。

しかも、その方策を、弁護士に相談することなく、単なる事務ルーティンとして処理しようとします。

これまでの経験上、中間管理者(企業の担当者)に、 トップとの直接のコミュニケーションインフラを排除あるいはブロックされた場合、ロクなことが起こりません。

そこで、弁護士は、担当者に、当該プロセスや、プロジェクト担当者の課題認知のための資源の有無について、疑義を呈します。

なぜなら、弁護士は、その立場・役割として、常に悲観想定をしているからです。

しかしながら、企業トップとの対話が成立することなく、弁護士としては同意いたしかねるような楽観想定に基づく悪手をすすめる企業も少なくありません。

悪手であったとしても、
「これがトップの決定だ」
といわれれば、弁護士は、指示に従いますし、その範囲と限度において最善を尽くすでしょう。

ただし、弁護士の想定どおり芳しからざる結果となれば、課題対処に関わったとはいえ、法律上はもちろんのこと、事実上も道義上も、弁護士としては責任を負担いたしかねることとなります。

企業の担当者は、従業員としての責任を負うことにはなるでしょうが、全責任を負うわけではありません。

全責任を負うのは、企業経営者以外にはいないのです。

何にせよ、法務事案はすべからくトップマターである認識にたち、トップに連絡を差し上げる前提を崩さない弁護士は、誠実であるとみるべきでしょう。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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