01844_「開業プロフェッショナル(開業医、経営弁護士等)の人生設計」について

「開業プロフェッショナル(開業医、経営弁護士等)」
となったら、まずは、

創業の障害と苦労を乗り越えるべく、PDCA(試行錯誤)を繰り返し、七転八倒する

なんとかサバイブに成功し、まともな事業体として軌道に乗る(黒字化)

サステナブルな状況になり、余裕ができる(安定黒字化)

1億の壁(あるいは5000万円の壁とも言われます。一人で事業を行っていると、売上が一定の上限に達し、頭打ちになる現象を指します)にぶち当たる

ここで、選択の岐路に至ります。

1 悠々自適で楽しく過ごす
2 現状人員・現状設備のままで、拡張を行っていく(=IT、DX、外注、提携戦略)
3 人員は増やさず、設備をゴージャスにする(=駅前に進出、自社ビルにする)
4 設備をそのままに、人員を増やす(=アルバイトドクターの招聘や、訪問診療拠点として訪問医を増やす)
5 人員を増やし、設備もゴージャスにしたり拡大する

著者の経験からすると、
1が最上策
2が上策
4が中策
3、5が悪手
です。

「2が上策、4が中策」
とするのは、一見不思議のように思われるかもしれませんが、2や4の策を取るプロセスで、
「情報弱者を食い物にする業者」
がたかってきて、費用対効果から考えて異常な仕事を発注させられ、カネと時間と労力を奪われるからです。

「IT、DX、外注、提携戦略や、アルバイトドクターの募集や管理や育成等」
を、外注に依存せず、自分で勉強して、自分で作り上げるなら、もちろん、最上策となる可能性を秘めています。

開業医の場合で考えますと、医者は、医療が最も得意なはずであり、
「IT、DX、外注、提携戦略や、アルバイトドクターの募集や管理や育成、訪問診療事業作り」
は門外漢であり、苦手なはずです。

同じ時間と労力を注ぎ込むなら、得意な医療に集中して資源動員した方が、効率的なはずです。

したがって、1が最上策となるのです。

ただ、例外もあります。

開業医の中に、たまに、
「医は算術なり」といった感じのメンタリティをもち、
「医療」
より、
「カネ」
が大好きで、
「医療」
を改善するための研究や情報収集より、
「カネを効率的に儲けること」の勉強の方が大好き、
という
「変わった人(ビジネスマンがたまたま医師だった)」
がいます。

このような方であれば、
・1では我慢できないし、
・もともと金儲けの手段なだけの医療は大嫌いだから、医療に注ぎ込む情熱以上の能力・研究資源を、「IT、DX、外注、提携戦略や、アルバイトドクターの募集や管理や育成、訪問診療事業作り」に注ぎ込むことを嬉々としてやる
ということになります。

そのような方は、
「同業のアルバイトドクター」を、
「同じプロフェッショナル」
としてではなく、
「金儲けのための便利な道具」
くらいにしかみていない可能性があります。

こういう人にとっては、1は中策であり、2や4をやっている方が、よき職業人生になるかもしれません。

この話は、法曹界でも同様です。

「事務所を大きくすることにまったく興味がなく、お金儲けにもあまり興味がなく、他人を支配したり道具として扱うのも苦手で、仕事の美意識や価値観と共有しながら、楽しく、職業人生を過ごしたいと思っているような弁護士」であれば、
1が最上策
2が上策
4が中策
となるでしょう。

ちなみに、著者は、ハードコア(中核、本質)としてのスキルや事業の運営の仕方は、1です。

弁護士の仕事は、ゲーム性があり、刺激があり、変化があり、進化があり、やればやるほど奥行きがあり、楽しくて楽しくてしょうがありません。

著者にとって重要なのは、まずは、美容と健康であり、ワークライフバランスであり、経済的にも時間的にも精神的にも余裕のある生活です。

「自分が立って、周りが立ち、周りが立って、社会が立ち、国が立つ」
という意識が優先しますので、
「滅私奉公、尽忠報国など、(中略)・オフ」
と思っています。

とはいえ、弁護士の所掌範囲は広汎であり、
「IT、DX、外注、提携戦略」その他「金儲けの研究」そのもの
が、仕事の本質であり、飯の種なので、2や3も並行して遂行し、
「芸の肥やし」
にはしておりますが。

著者としては、弁護士の仕事を全うすれば、クライアントから感謝され、カネを払ってもらえ、敬意を払ってもらえ、適度の刺激が老化予防・認知症予防になり、まったく言うことなし、と考えています。

こうやって割り切って入れば、視界もクリアで、人生設計に迷わず、また、同業者で手広くやっている人間をみても、何の感受性も沸かないですが、問題は、軸がしっかりしていない人です。

1億の壁(あるいは5000万円の壁とも言われます。一人で事業を行っていると、売上が一定の上限に達し、頭打ちになる現象を指します)にぶち当たった開業医や経営弁護士で、彼なり彼女なりが、
「悠々自適で楽しく過ごしたいのか?」
「現状人員・現状設備のままで、拡張を行っていきたいのか(=IT、DX、外注、提携戦略)? また、そのために、時間なりコストなり労力資源を動員・費消する気があるのか?」
「人員は増やさず、設備をゴージャスにして(=駅前に進出、自社ビルにする)、優越感に浸りたいのか?」
「設備をそのままに、人員を増やし(=アルバイトドクターの招聘や、訪問診療拠点として訪問医を増やしたり、アソシエイト弁護士を増やしたり)たいのか?また、そのためにつきまとう、固定費増加や採用負担や教育負担を被る覚悟があるのか?」
「人員を増やし、さらに、設備もゴージャスにしたりして、すべてを拡大していき、これに比例して、 固定費増加や採用負担や教育負担を被り、大きな不安とストレスを被る覚悟があるのか?」
というトレードオフ課題に対する価値観や哲学や美意識や覚悟がふらふらしている場合に問題が生じます。

「楽しく過ごしたいし、金はもっとたくさん欲しいし、手下を増やして威勢を張りたいし、ゴージャスな設備で優越感に浸りたいし、DXやAIといった最新技術を導入したい。しかし、固定費増加も面倒な採用・教育、あるいはDXだのAIだの七面倒臭い、専門外のことは勉強したくない」という不安と迷いが生じ始めます。

そのうち、言葉巧みに近づく、 コンサルタントや人材紹介や
「アーリーアダプター向けに過渡期の未熟な技術を高い値段で買わせるIT関係業者」
の餌食になり、無駄なコストと無駄な時間と無駄な労力を費消し、何より、成長のための機会を奪われ、その結果、人生大きく遠回りする、という悲劇が起こることになるのです。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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