有事になると、相手方は、戦争になるくらいの勢いで全集中で争うでしょう。
もちろん、こちらも、争います。
あの手、この手、奥の手、禁じ手(といっても、当方は相手方の出方の検討に用いるのみで実施は控えますが)、寝技、小技、反則技(といっても、当方は相手方の出方の検討に用いるのみで実施は控えますが)を繰り出し、総力戦で争います。
しかし、争うといっても、結局、互いに論戦をしても埒が明きません。
そうなると、相手は、訴訟を提起して打開するほか、選択肢がなくなります。
訴訟を提起するためには、自身の状況をミエル化・カタチ化・言語化・文書化・フォーマル化した形で訴状としてまとめ上げ、さらに、これに客観的痕跡(証拠)を整理・添付するなど膨大な事務資源・管理資源の費消が必要となり、相当な時間とコストと労力が必要となります。
当然、訴訟提起するまで、一定の時間的冗長性が生じますが、応訴側は、応訴側の主張とスタンスを堅持して、応訴側の論理にしたがって行動すればいいだけです。
訴訟になった場合ですが、短くても8ヶ月、下手をすれば、年単位でかかります。
しかも、裁判といっても、白黒をつけることを最優先課題として意識されているわけではありません。
判決は、下策とされ、和解交渉が失敗あるいは不可能な場合の、嫌悪・忌避すべき最後の手段であり、裁判官は、何度も、何度も、何度も、双方に和解を提案し、和解成立に尽力します。
「判決を書くのが面倒」
「手っ取り早く解決件数を稼ぎたい」
という卑近な事情もあるのでしょうが、判決を書いたところで、どちらかが控訴したら紛争が解決せず、貴重な国家資源をつまらない争いのために費消させられ、さらには、控訴された挙げ句、原判決が取り消されたら、自身の体面や出世にも関わります。
結局、訴訟は加害者側が圧倒的に有利になる、という日本の裁判制度の致命的欠陥に守られ、ゲームを有利に進められることになります。
裁判制度という
「被害者の救済システムとしては、あまりにポンコツなシステム(加害者にとっては非常に頼もしい防御的制度)」
のおかげで、また、被害者が負担しなければならない
「時間と労力とコストの壁」
によって、加害者サイドが守られることがあります。
もちろん、こちらが被害者であれば、その逆の状況に陥ります。
志の低い言い方になりますが、民事紛争の局面に限っては、
「モメても、決して、被害者側になるな。加害者になるように状況構築をせよ」
「なるんだったら、被告が有利」
「加害者、被告に九分の利あり」
「モメたら、理由はともかく、返還請求や原状回復を受ける立場を構築できるよう、とっとと事実や状況を動かせ」
というのが、戦理にかなった方法論となります。
著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所
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