01946_紛争事案を依頼する前の作業

紛争の原因は1つと思われがちですが、ほとんどの紛争は、複数の事象が複雑に絡み合って起こります。

裏を返せば、1つの紛争には複数の事象が存在します(*)。

さて、紛争事案を弁護士に相談する際、依頼者が予め準備するものの1つとして、
「事実関係を時系列で整理する」
というものがあります。

「なんだ、そんなことか」
と言う依頼者も少なからずいるのですが、この作業は重要です。

相手方に対するものであれ、公的機関(裁判所、捜査機関、行政機関)に対するものであれ、自分の身に降り掛かった事件に関し、自分の立場や正当性を適切に主張し、事件の相手方に法的な請求を行い、あるいは相手方からの不当な請求を排除する主張を構築する上で、必須の前提となるからです。

あとから、事実関係の
「証拠」
が必要となる場合もあります。

ですから、この作業は、簡単そうであって、実は大変手間がかかります。

時間との関係もありますが、この作業を丁寧にすればするほど、相談を受けた弁護士は、依頼者の抱える紛争事案から事象(テーマ)を因数分解しやすく、相手の出方(相手のミスやエラーや心得違いや違法行為を含む)や、筋の見立てがつきやすくなります。

逆にいえば、雑であれば雑であるほど、あとになって
「新たな事実」
が出てきた場合、
・認識にも認容にもつながらない
・話の筋としておかしい
・「新たな事実」の意味や評価を争う
ことになりかねません。

作業の手順としては、依頼者は、当方と相手方の行為を事実ないし状況として5W2Hの形(「How」だけでなく、「how much」「how many」という定量的・数額的な特定を含む)で特定し、整理し書き出していきます。

5W2Hの形で特定に至らないものは、言わば、単なる噂や罵詈雑言・独り言のレベルということになり、つかいものになりません。

現実として、最小限の時間とお金で最大限の効果を望む依頼者は、この作業の必要性・重要性を認識し、丁寧に準備します。

この作業が雑な依頼者は、紛争事案の解決に多大な時間とカネを費消する傾向にある、のは言うまでもありません。

我々は、この作業を
「ファクト・レポート」
と呼んでいます。

(*) 訴訟となった場合、同一の原告が同一の被告に対し、1つの訴えをもって複数の請求をなすこともあります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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