01966_未払残業代事件における裁判所の対処哲学その2_「未払残業代事件での企業受難時代」の背景

裁判所が人権擁護に目覚めた、という側面がないとは言い切れませんが、むしろ、昨今の
「未払残業代問題についての、徹底した労働者寄りの裁判所の対処哲学」
は、日本の産業界の未来を憂いた、エスタブリッシュメントとしての確固たる信念に支えられているものと思われます。

すなわち、無料でいくらでも働かせる人的資源があり、企業がこれに依拠して経営ができるとしましょう。

そうすると、企業は、経済合理性を追求することから、無限で無償の労働力に安易に依拠するようになります。

その結果、生産効率は改善されず、設備更新もされず、進化に取り残されてしまいます(ガラパゴス化)。

そりゃそうです。

タダでいくらでも動かせる資源があるのに、わざわざカネをかけて、別の稼働方法を考えたり、実行したりするなんて馬鹿なことをする企業はいないはずです。

しかし、そうすると、人的資源の高コストに悩まされた国において、生産効率が改善され、設備更新が進み、やがれ、技術格差が広がっていき、進化から取り残され(ガラパゴス化)、最後に、圧倒的な新技術、AI(人工知能)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション。ホワイトカラーのデスクワークを、パソコン等に格納された自律型ソフトウェア・ロボットが代行・自動化するシステム)等が到来して、駆逐されてしまいます。

これは、鎖国によって進化から取り残された江戸幕府が、黒船によって一気に駆逐されたと同様の事態が生じる危険が生じる、ということを意味します。

人的資源は有限で有償の資源であり、しかも、今後枯渇し、ますます依存不能となります。

これを、経済的に認識させ、正しい環境認識・正しい負荷認識の下、改善・発展のための真っ当な努力をさせ、日本の産業社会を継続的に発展させるべきであり、これが遅れると、日本の産業社会が世界から取り残されることになりかねません。

労働者の人権が大切、という以上に、日本そのものを生き残らせるため、日本のエスタブリッシュメントは、必死の思いで、構造改革を進め、あるいは、企業に行動を変えさせるメッセージを伝えようとしているのだと思われます。

この現れとして、立法府や行政府としては
「働き方改革」
司法府としては
「違法残業の駆逐」
という体制方針として具体化されている・・・そう考えると、現在の労働課題のトレンドがよくみえてきます。

続きは、01967

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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