01974_労働事件における交渉条件提示を会社側が躊躇あるいは放置していることのリスク

労働事件において、交渉のテーブルに双方がついた状況で、
「交渉を進めるための(会社側からの)妥協的条件提示がなかなかできない」
ことに相手方がしびれを切らした場合、訴訟(ないし労働審判)に移行、という最後通告を受けかねません。

弁護士としては、クライアントである会社側から、方針について
「了承」
をもらわないことには、相手方に対し、勝手に条件提示等は一切できません(クライアントとの関係では越権行為になりますし、相手方代理人との関係でも、不誠実な交渉したことで責任が発生しかねません)。

無論、会社として、
・「法廷闘争も辞さない」
かつ
・「そのための弁護士費用追加分や内部人員の動員を含めた費用増加も辞さない」
加えて
・「上記のような時間とコストとエネルギーを費消したにもかかわらず、示談段階より不利な高額支払いを命じられるリスク(というか高度の蓋然性)も覚悟の上である」
という理解認識である、ということであれば、それはそれで1つの判断です。

可能性の問題はさておき、弁護士としては、クライアントの判断を尊重し、(無論、費用はかかりますが)出来る限りの支援をします。

ただ、価値観やアイデンティティの問題として、
「経験則上の期待値をふまえた経済的合理性に基づく判断」
を捨象して、情緒的な決断をした場合、その結果は、
「(会社にとっては)より腹立たしい、経済的不利を招来する」
という高度の蓋然性は、プロの立場として指摘せざるを得ないことも、クライアントは了承しなければならない、ということになります。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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