01985_企業法務ケーススタディ(No.0372):契約期間中に内容変更のあった契約を、当初の契約どおり2年で終了できるか

【企業法務でありがちなケース・情景】

2年契約で結んだ契約でしたが、思ったように効果が出なかったので、2年で終了しようと考えていました。

なお、契約期間中に、相手の都合で契約内容に変更がありましたが、いつの間にか、契約内容変更の時点からさらに2年という契約になっており、契約相手から契約は続く、と言われてしまいました。

そもそもなぜこういうことが起こったのでしょうか?

こういうケースで、なんとか当初の契約どおり2年で終了させることは可能でしょうか。

【畑中鐵丸弁護士の助言・アドバイス・御指南】

「相手の都合で契約内容に変更があり」
ということですが、そこで、変更した契約にハンコを押しているはずです。

おそらく、契約内容変更の際に、変更された契約書か、あるいは変更の覚書をよく読んでいなかったことが原因です。

契約は、認識していたこと、思いこんでいたこと、想定していたことは無意味で無価値であり、書かれたことがすべてです。

変更されたときに押印したのが覚書だろうが、確認書だろうが、どんなライトでカジュアルなタイトルであっても、契約書と同等の効力があり、上書きされた場合、直近の契約書に書き換わります。

一般に、ビジネスパースンは、契約書を読むのが苦手です。

甲とか、乙とか、出てくると、ブラックアウト(視力喪失)になる方もいらっしゃいます。

あるいは、契約書をみると、南妙法蓮華経とか、摩訶般若波羅蜜と、同程度にしか理解できない、とおっしゃる方もいます。

まだ、そういう形で、素直にギブアップしてもらえればいいのですが、
「バカと思われたくない」
「体面にかかわる」
「俺は学歴はなくても、知性はある」
という意地とプライドで、読んだふり、知ったかぶりをして、
「よく理解できていません」
ということを言わないまま、署名押印する人もいます。

最悪なのは、契約書を読んでも理解できないとき、契約書を作成した契約相手の説明を聞いて、納得する場合です。

泥棒にカネを預けるような危険な行為ですし、絶対推奨できません。

なぜなら、契約相手は、無知な人間や、理解していない人間や、字や文書をよく読めない人間に、本当のことを言う必要はないからです。

美しい誤解はそのままに、そっとしておく、のがビジネスの世界のルールです。

読まない奴が悪い、相手を信頼した奴がアホ、大事な契約をするのに時間を惜しみ、手間を惜しみ、署名したことが命取りになる、それだけの話です。

「どうすれば良かったのか!?」
と言われそうですが、まず、
「自分は契約書を読む能力がない」
「(契約書は)李白や杜甫の五言絶句の漢詩にしか見えない」
ということを素直に認めることが最初です。

また、自分で読めなければ、がんばって時間をかけて読む必要はありません。

ビジネスの世界では、カンニングは推奨される行為です。

部下で契約書を読める人間、部下も読めなければ、顧問弁護士なり依頼した弁護士に、
「この意味不明な呪文ないし暗号は一体なんて書いてありますか」
ということをカネを払ってカンニングすればいいだけです。

あと、カンニングする場合、“誰にカンニングさせてもらうか”は大事です。

契約の相手の助言は絶対聞いてはいけません。

嘘は言わないでしょうが、本当のことや、自分たちに不利なことまで言う義務はないので、有害なノイズしか聞こえてきません。

いずれにせよ、変更の際の上書きが有効になっているので、
「初の契約どおりにしろ」
というのは寝言扱いになっている可能性が大きいです。

あとは、契約書に書かれた相手の義務の不備や未完成の点があればそれを持ち出して、期間満了を待たずに、契約解除を主張して、途中解約扱いとして、合法的に契約料金を踏み倒す。

もし不備や未完成がなければ、言いがかりでも因縁でもなんでもつけて、あるいは、あら捜しをして、あの手、この手、奥の手、禁じ手、寝技、小技、裏技、反則技を使って、契約終了の理由を構築して、紛争状態に持ち込んで、妥協や譲歩のノリシロを作って、最後は手打ちする、というところでしょうか。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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