01994_リスクマネジメントやリスク対応系プロジェクトについての検討ロジック

事件化となったときに、プロジェクトオーナーは、弁護士チームと、マネジメント遂行上の、思想、哲学、ロジックの共有が必要となります。

1 学校で教えられたことと、社会の現実は違います

学校:
・努力は尊い。
・結果が全てではない。
・努力はいつか報われる。
・失敗をおそれるな 次がある。

社会の現実:
・無駄な努力、無意味なガンバリ、というのは山程ある。
・目的から逆算した最小限の犠牲で十分。
・方向性を誤って空回りしていても、努力は無意味。

2 正しいプロジェクトの進め方

(1)正しい状況認識:
・自分のおかれた状況と現実と改善可能な範囲や相場観を知る。

(2)正しい目的を立てる:
・達成可能で現実的で損得勘定において意味ある目的を定める。
・未来の姿を具体的にイメージする。
・具体的であればあるほどいい。

(3)正しく課題をみつける:
・1の不安要素から10のネガティブな未来を予測し、イメージできる能力をもつ。
・プロジェクトマネジメント知性。
・細部の破綻に目をつぶり、異常値を見えないふりして、性善説や科学的合理性というバイアスを使って、全体を正常かつ健全に統合するのがモデル化して満足してしまう。
・仮説に反する有害な現実は、異常値や誤差やバグとして、シカトする。

(4)正しい命令を企画・制作・デリバリする:
・命令は、受ける方より、発する方が大変。
・間違った命令を発すると、大きなロスやダメージが発生し、命令を行った者が罰せられる。
・また、デリバリも大事。
・あくまで到達主義。
・受け手が理解してナンボ。
・抽象的で、意味不明で、指示内容が一義的でない命令や、受け手が理解できない難解さや高尚さをもったものは、正しくない命令。

(5)正しく命令を実行する:
・命令の実行に大切なのは、結果指向・目的指向で、卑劣で非常識なものも含めて、合理的に準備を行ない、段取りを組む。あらゆる想定外を想定し、悲観的に考え、命令が達成できない場合の予備案(Bプラン)をもっておく。
・チームで命令を遂行する場合、インセンティブ設計(残念賞も)や、士気亢進システム(ゲームロジック)。

(6)命令の達成状況を確認する:
・何事も失敗や修正はつきもの。
・人は怠惰の誘惑から逃れられない。
・線表による達成状況の監視とペナルティーのシビアな運用等は必須。
・丸投げしたり、ブラックボックスを作ったままの遂行体制は不可。

( 7)正しく試行錯誤を行う:
・失敗や想定外が生じたら、修正力を働かせ、修正提案を命令発令者に意見具申する。
・意見具申なく、独断でのコミュニケーションは不可。

(8)正しく結末を総括する:
・目的全部達成、一部達成、修正された目的達成、失敗・諦め・撤退という結末を総括する。
・撤退見極めをせず、ずるずる泥沼に引きずり込まれないようにする。

3 ありがちなプロジェクトにおける失敗

(0)常識・憶測・思い込み:
・学校の先生やサラリーマンや専業主婦の親の教えてくれた常識で推し量る。
・迷ったら、常識という
「偏見のコレクション」
で、憶測し、思い込み、たくましく想像する。

(1)間違った状況認識:
・偏見等によって認知がゆがんでしまい、自分のおかれた状況が理解認識できない。
・不愉快な現実を直視しない。
・特に、失敗の原因が自身にある場合、自己保存のため、自分にウソをついて、あるいは事実を意図的に誤解し、自己の尊厳を守り、現実を受けいれない。
・改善不能ことや、達成が不可能なことを想像したり、現実的実務的な相場観を拒否し、テレビやドラマで見知ったファンタジーを前提にした身勝手な結末が劇的に達成されることを妄想する

(2)目的があいまい、不合理、意味不明:
・達成不可能で、非現実的な目的であったり、損得勘定ではなく、主観や感情(正義や嫉妬やコンプレックス解消や報復感情)を前提に、経済合理性のない目的を定める。
・完成予想図、成功時の未来の姿が具体的にイメージできておらず、曖昧。成功者や達成した経験者の話を聞かない。
・聞いても、自分に都合よく解釈する。

(3)課題がよくわかっていない。課題がないと信じている:
・不安要素や都合の悪い事象や障害は、無視する。
・見て見ぬふりをする。
・ネガティブで不愉快な未来を予測しない。
・細部の破綻に目をつぶり、異常値を見えないふりして、性善説や科学的合理性というバイアスを使って、全体を正常かつ健全に統合するのがモデル化して満足してしまう。
・仮説に反する有害な現実は、異常値や誤差やバグとして、シカトしてしまう。

(4)命令がデタラメで適当で理解不能:
・抽象的で、意味不明で、指示内容が一義的でない命令や、難解や高尚に書かれているが、何を期待し、何を義務付けられているか、さっぱりわからない正しくない命令が出されている。

(5)命令が正しく実行されていない:
・準備が不十分、段取りが粗い。
・チームで行う場合において、インセンティブ設計(残念賞も)がなく、やる気がでない。
・結果達成が可能性にとどまるにもかかわらず、ゲームロジックがなく、ルーティンとして遂行される雰囲気になっている。
・達成状況監視システムや体制もなく、丸投げされており、ブラックボックスがたくさんあり、何かやっている風ではあるが、何をやっているかわからない。
・楽観バイアスに侵されているため、命令が達成できない場合の予備案(Bプラン)が欠如している。

(6)命令の達成状況は確認しない:
・失敗や修正は考えないし、性善説に立つので、まさか、部下や命令を受けた者がサボったり、手を抜いたり、不注意で漏れぬけやらかす、とは想像すらしない。
・線表による達成状況の監視とペナルティーのシビアな運用など、
「部下を信頼していないと思われる。やる気をそぐ」
という意味不明な理由で排除。
・丸投げし、ブラックボックスがあちこちに出来、何がどうなっているかすらわからず、ただただ、時間とコストとエネルギーを消耗していくが、その経過すら不明。

(7)試行錯誤を想定しない。一度やってダメなら、ジタバタしたり、あがいたりせず、潔く、あっさりと辞めたり、休んだりする:
・失敗や想定外が生じたら、それで思考停止に陥り、行動を停止し、神風や都合のいい天変地異や外的事象によって状況が改善することを夢想する。
・というか、悲惨な結果から目を背け、なるべく忘れるようにする。
・あるいは、プロジェクトが終了すると、報酬がもらえなくなったり、お払い箱になるので、独断で、コミュニケーションなく、勝手に目的を書き換え、別のことをはじめ、何か仕事をしている、という外形を作って、状況を引き延ばす。

(8)結末を総括したりしない:
・目的全部達成ならいいが、少しでも達成できなかったり、失敗・諦め・撤退という悲惨な結末となったら、とりあえず、総括せず、ずるずる続ける。
・その結果、泥沼に引きずり込まれても 、
「そのうち天佑がある」
という意味不明で身勝手な妄想で、事態打開を神に祈りつつ、損害を拡大する。

上記リテラシーを、腹落ちするまで、精読し、理解し、行動できるよう脳に染み込ませ、有害な常識をすべてこそげ落とすことを推奨します。

そして、プロジェクト遂行完了まで、
“懐疑し、信頼せず、脳をフル活用して、戦理にのっとって、効率的な試行錯誤を続ける”
覚悟を持つことです。

おそらく、
「読むのは簡単、理解もできる」
「言われてみればな~んだ」
という内容ですが、実践できる方は、0.001%くらいですし、この方々は、ほぼ、成功者ないし富裕層として、この社会で君臨しています。

著者:弁護士 畑中鐵丸 /著者所属:弁護士法人 畑中鐵丸法律事務所

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